株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

読んで見直す 料理提供の基礎(1)
料理提供の心得

読んで見直すシリーズ

さて今回は、サービスの中でも『料理提供』に焦点をしぼっています。品質を高めるために重要なことは、ここでも基礎力の充実です。

 

【テーマ1】: 料理提供の心得

 

【テーマ2】: 美しい提供動作

 

【テーマ3】: 料理提供の実務

 

【テーマ4】: 食事会場別のポイント

 

料理をおいしく召し上がっていただきたいという想いが何より大切なこと、そしてその想いをどのようなことばや動作で表現したらよいのか。
今回も4週間をかけて、ひとつずつしっかりと確認していただきたいと思います。

 

1.料理の知識と思い入れ

料理提供という仕事は、料理をお客様の前に運べばよいのではありません。料理提供で一番大切なことは、「お客様においしく召し上がっていただきたい」という思いです。料理を作る調理担当者の思いと同じです。

料理の素材がどのように選ばれたのか、どのような手間をかけて作られているのかを知ると、料理に対する関心が高まり、自ずと料理への思い入れが育まれます。また、料理への思い入れがあればこそ、お客様が喜んで召し上がってくださっているかどうかが、気にかかるものです。

 

知識が思い入れを育み、その思い入れが料理説明のことばや美しい提供動作に表現され、さらにお客様への気遣いにつながっているのです。

忘れることのできない、料理説明のことばをご紹介します。

 

その係の方が持ってきたものは、茶碗蒸しでした。私のお膳に茶碗蒸しを置いてから、こう付け加えました。
「茶碗蒸しをお持ちしました。どちらでもよく出されると思いますが、この茶碗蒸しが私は日本一だと思います。本当においしいので、ぜひ召し上がってみてください。」
松茸もうなぎも入っていない、ごく普通の茶碗蒸しでしたが、本当においしくいただけました。
後からお話をうかがったところ、以前はお客様がよく手もつけずに残されていたのだそうで、おいしい茶碗蒸しなのに残念でならなかったのだそうです。それで、先述のようなことばを添えてみたところ、残されるどころかみなさん「おいしい、おいしい」と召し上がってくださるようになったというのです。「調理場で一生懸命作っているので、残さず召し上がっていただけるのがうれしいのです。」と、話を結んでくれました。

いかがですか。これから、ことばの添え方や提供動作について考えますが、そのもとになる「思い入れ」の大切さを、心に留めておいてください。

 

 

2.ことばの添え方

 

料理や素材、召し上がり方などの説明は、お客様の戸惑いをなくし、楽しい発見のお手伝いのために、なくてはならないものです。

* 献立表を添えている場合でも、料理名を伝えましょう
揚げ物/胡麻豆腐湯葉包揚
「こちらは、胡麻豆腐を湯葉で包んで揚げたものでございます。」

 

* こだわりのひとことを添えると、ありふれた素材も価値が高まります
地のもの 「地元特産の○○椎茸を使っております。」
季節のもの「このあたりでは今が旬の○○でございます。」

 

* おすすめの召し上がり方をお知らせして、料理を堪能していただきます
「こちらは酢橘でございます。お好みでお使いくださいませ。」

器を下げることは、料理を出すことより気を遣うべきです。その気遣いはことばで表しましょう。いつも「こちらはお下げしてよろしいですか。」ばかり使っていると、下げることに一生懸命になっているような印象を与えます。
場に応じて、ことばを使い分けましょう。

 

* すべて召し上がっていて、下げてもよいと思われる時
「こちらはお済みでございますか。」

 

* 器を重ねたり端によけるなどして、終わった合図がある時
「こちら、お下げいたします。」「こちら、頂戴いたします。」

 

* ほんの少し残っているようでもあり、下げてよいか迷う時
「お下げする器はございますでしょうか。」

お客様がお食事を楽しんでいらっしゃる様子は、もちろん、よく見ていればわかります。ところが、気になるような様子がある時には、こちらからことばをかけておうかがいしなければ、正しく把握できません。
配慮のことばをかけたい場面には、次のようなものがあります。

 

* 料理は気に入っていただけているか
「お料理はいかがでございますか。」

 

* 残しているお料理はお口に合わないのだろうか
「こちらはお召し上がりいただいていますか。」
注意)「お口に合いませんか」と、否定的な質問はしません

 

* 召し上がり方など説明不足はないか
「お出汁が煮立ちましたので、どうぞお入れくださいませ。」

 

* 料理をお持ちするタイミングは、早過ぎないか、遅過ぎないか
「お早めにお持ちしてしまいましたでしょうか。」
「たいへんお待たせいたしました。」

 

* お飲み物は足りているか、アルコールを飲まない方はお茶や何か別のお飲み物をご用意するほうがよいか
「お茶か何か他のお飲み物をお持ちいたしますか。」

 

器を下げるときのことばや、お客様のお召し上がりの様子に合わせてかけることばは、お客様への配慮そのものです。ことばがけによって、お食事の場を和やかなものにいたしましょう。

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