旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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忘れ物の取り扱いルールの共有(第1回)
接客現場のオペレーション
ここでは、2回にわたって、お客様の忘れ物の取り扱いに関してのルールやオペレーションについてとり上げます。ティッシュに包んで洗面所に置き忘れた入れ歯を回収車が来る前に探し出した話、冷蔵庫に入れたまま帰宅されたワインを、捨てるのはもったいないからと清掃担当者が別のところに取っておいた話、記念日のお菓子の残りを処分してしまってお客様が泣き出してしまった話など、いずれも他人事ではありません。この話題になると、「うちでも大変でした。」と、堰を切ったように話されることが多く、どちらでも同じように困っていることがわかります。
トラブルになりやすいケースは、清掃担当者などが「忘れ物として扱うのか、処分するものとして扱うのか」と判断に迷う状況で起きています。処分してしまい、後から「忘れたものを受け取りたい」と言われて慌てることもあります。全館共通のルールのもとで、トラブルを回避し、安心して対応できるようにしていきましょう。
忘れ物ルールの再確認
まず、忘れ物には法律の適用があり、それを踏まえて約款を定め、運用する必要があります。ですが、中には約款とホームページのFAQやチャット形式の回答に差異がある施設もありました。また、フロントと清掃担当の認識の違いも少なくありません。
全部署統一のルールが共有できているか、そして実際にそのように運用されているか、まず再確認をしておきたいものです。
1.遺失物取り扱いの流れ
忘れ物(遺失物)の取り扱いは、規定に従って対応と処分のルールを定めておきましょう。詳しくは、都道府県警察などのホームページで確認ができますが、概要としては以下の通りです。
■遺失物取り扱いの流れ(特例施設占有者の場合を除く)
・拾得者(発見したお客様や従業員等)は、施設占有者に拾得物件を24 時間以内に差し出す
・施設占有者は拾得物件一覧簿に登載・掲示する
・提出書とともに、差出のあった日から7日以内に警察署・交番・駐在所に拾得物件を提出する
1.特例施設占有者として、あらかじめ警察署と大規模商業施設などが遺失物取扱に関する取り決めを取り交わしている場合は、一定の期間、相応の対処を施設で行うことができます。
例えば、通常の拾得物件については、権利が有効となる差し出し期限が7日間から14 日間に延長されます。
2.落とし主が判明するか、拾得物を警察署長に提出するまでの間、拾得物の「種類及び特徴」や「拾得された日時及び場所」を公衆の見えやすい場所に掲示しましょう。
3.落とし主が見つかった場合、拾得者には謝礼(報労金)を請求(施設内での拾得は施設と折半で各1割まで、路上拾得の場合は2割まで、物品は経年価値から算出)できる権利がありますが、その場合には拾得者の連絡先を落とし主に知らせることが必要であり、拾得者がそれを望まない場合は請求ができません。
つまり、宿泊施設で落とし物の届け出をお客様から受けた場合、本人が拒否しない限りは、拾得者の情報を記録しておく必要があります。落とし主に拾得者の情報を伝えないとしても、落とし主が現れなかった場合の引き取りの連絡のため、また無事に落とし主にお渡しできた場合の報告に備えて、本来は拾得者の連絡先を伺っておくことになります。
4.落とし主が見つからない場合、拾得者は遺失物を引き取ることができます。ただし、パソコン、携帯電話やクレジットカードなど個人情報を含むものについては、拾得者はそれを引き取ることができません。
お客様の大切な忘れ物をめぐるトラブルは、身近な問題です。全館共通のルールを明確にし、各部署で認識や運用に違いがないか今一度見直して、万が一の際にも落ち着いて対応ができるようにしましょう。
次回は「宿泊約款記載例と検討課題」についてお伝えします。
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