株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

読んで見直す クレーム対応【心構え・抑止編】
(4)事例研究/クレームにつながる言動

接客サービスの品質向上

実は、お客様が憤る原因を私たちがつくっていることがあります。それでも現場からは、「なんで急に怒りだしたんだろう」「私も仕事だから言っているだけなのに、なぜ怒られなくてはならないんだろう」と、疑問や辟易とした声さえ聞こえてきます。 これからあげる3つのケースに、自分たちも似たようなことがなかったか、少し振り返りながら読んでみてください。 そして、どのように考え、どのようなことばを使えば、お客様の理解が得られるのかを知っていただきたいと思います。

ケース1)チェックアウト時間を過ぎているのに、客室から出てこないお客様との応対

フロント「フロントでございます。鈴木様でいらっしゃいますか。」

お客様 「はい、そうです・・・」

フロント「申し訳ございませんが、チェックアウトのお時間を過ぎておりますので、お荷物を持ってフロントでご精算をお願いできますでしょうか。」
お客様 「それは、わかってるよ。(少し過ぎたぐらいでせかさないでほしい)」
フロント「延長になりますと追加料金がかかりますので、お早めにお願いいたします。」
お客様 「わかってるって言ってるだろう。」
フロント「それではお待ちしております。(なんだか怖そうなお客様だな)」

 

・・・その後5分ほどしてフロントに来られ、会計も通常通りに終えた。
お客様 「おたくは、ちょっと時間が過ぎたくらいで客を追い出そうとするんだね。」
フロント「いえ、追い出すだなんてとんでもないことです。それに、15分過ぎていたのでお知らせしただけなんですけど・・・」
お客様 「だったら、もっと言い方があるだろう。帰り際に最悪の気分だ。」

 

 

ケース1)解説

ケース1では、「お客様にルールをお伝えしなければならない場合」について取り上げてみます。

 

このフロント担当者、自分はすべきことをしただけなのに、怒られて損をした気分でしょうか。いったいどこに問題があるかわかりますか。追加料金の話を持ち出したためでしょうか。

 

いいえ。一番の問題は、お客様の都合を考えてみようとしていないことにあるのです。実は、このお客様、お部屋で奥様が売店で買ったお土産をまとめるのに手間取っていて、「早くしないか」とせかしていた時に、電話を受けたのかもしれません。

 

私たちは、ルールを伝えて何かをお願いしなければならない時にこそ、お客様の立場に立って、ことばを選ばなければならないのです。

「チェックアウトのお時間でございますが、ご都合はいかがでしょうか。」と、こちらからの申し入れの前に、お客様のご事情をうかがってみることです。

このケースでも、そうすれば「すみません。今、荷物をまとめているので、もう少しでそちらに行けます。」などと、お答えになっただろうと思います。

 

他にも「子供がトイレに入っちゃったので、すみません。それと荷物を運ぶカートはどちらで貸してもらえますか。」などという会話になるかもしれません。

もちろんそのような時に、手がかけられれば「それでは、お荷物のお手伝いに、ただいまおうかがいいたします」と、積極的なお手伝いのチャンスにすることもできるのです。

 

 

ケース2)食事会場で走り回っている子供を静かにさせてほしいと言われた時の対応

お客様A 「すみません。あちらのお子さんが走り回っていて、落ち着いて食事ができないんです。親が注意しないのもいけないけど、あなたも静かにさせてくれないと・・・」

食事担当者 「はい・・・それではお話してまいります。(直接言えばいいのに・・・)」

 

・・・お子様に近づいて声をかけ、お子様とご家族の席へいっしょに向かう。

食事担当者「失礼いたします。お子様のことで、お願いがありましてうかがいました。」

お客様B 「はい、何か?」

食事担当者 「熱いお料理なども運んでおりますので、お子様が走っていますと、ぶつかってお怪我をしてはいけないので、お席に座っていてもらえるようにお願いできませんか、」

お客様B 「そちらが料理を早く出してくれればいいのに、子供はもうあきちゃってるんですよ。」

食事担当者「申し訳ございません。ただ、他のお客様から落ち着いて食事ができないと、お話があったものですから・・・」

お客様B  「それって、私達よりその人達のほうが大事だっていうことなの?」

食事担当者「そんなことはありません。失礼いたしました。

(だから、言いたくなかったのよ)」

 

 

ケース2)解説

どうでしょう。やはりご注意など、言いに行かないほうがよかったのでしょうか。

 

このケースは、「お客様に注意に近いお願いをしなければならない場合」を題材にしてみました。食事会場での他のお客様のにぎやかな声に対するご意見や、上階の客室からの音に関するクレームなども、同様のケースとして多く見られます。

 

まず、最初にご意見を言われたお客様に対して、これは明らかなクレームですから、原因がそのお子様とご家族にあると思っているような言動で対応していては困ります。

「それは気がつかず、申し訳ございませんでした。すぐに対応させていただきます。」と、クレームの初期対応の基本中の基本、《具体的なお詫びのことば+責任感の提示》を述べましょう。

 

さて、どのようにお願いすればよいのか、考えてみましょう。

まずは、話の切り出し方を考えてみましょう。実際には『お願い』であっても、遠慮があったり言いにくかったりするお願いは、『ご相談』をすべきなのです。

お願いということばは、控えめではあるけれど、要は私の意思が主体なのです。私の考えていることに対して、ご了解をいただきたいと持ちかけるのがお願いです。いくら「・・・していただけますでしょうか」と結んでも、主体は変わりません。

 

一方ご相談は、私の考えはあるにはあるのですが、あなたのお考えを聞かせていただきたいのです、という働きかけになります。つまりどちらかと言えば、主体は相手の方の意思にあり、それを尊重したいという表現として伝わります。

「お子様のことでご相談がございます。」と、持ちかけたかったわけです。

 

次に、ケース1)でも触れましたが、お客様のご事情に想いをめぐらせていたでしょうか。これはよく聞くことばなのですが、「お料理を運んでいて、おケガをされるといけませんので・・・」というのは、まさにこちらの事情説明であって、先に伝える話としては、感心できる言い方ではありません。チェックアウト時間を過ぎていて、延長料金がかかりますよ、だから客室を空けてください・・・と言っているのと大差ありません。

 

「お子様はお食事がお済みでございますか。」

 

「みなさまのお食事があと少しございます。急いで用意をいたしますが、お時間をいただき申し訳ございません。」

 

「本来であれば、私がお子様のお相手をさせていただけたらと思うのですが、今しばらく手が空けられずにおります。代わりに、こちらの絵本(パズル・迷路・折り紙)をお持ちいたしました。」

 

このように、事情は推測がつくのですから、本来こちらがお客様のためにしてさしあげたいこと、それができなくて申し訳ないことを伝えましょう。加えて、何か便宜を図れることがあれば、積極的にお手伝いを申し出ることです。 そして、気持ちよくご相談に応じていただかなくてはなりません。

 

さらに、もうひとつ気をつけなければいけないのが、「お席に座っていてもらえるようにお願いできませんか」という具体的な指示を含めたお願いのことばです。

これを聞いたお客様が、いやな気持ちになるのは当り前です。そのとおりにすることは、「言われたから、せざるをえない」という状況だからです。

 

つまり、具体的にどうすべきかは、お客様にゆだねるべきなのです。そして、

「お子様にもがまんしていただくようで申し訳ないのですが、ご配慮いただければありがたく存じます。」

と、結びます。

がまんしていただくようで申し訳ないということは、がまんさせてほしいということです。しかし、それをお願いしてはなりません。

 

ここでは出てきませんでしたが、お子様の名前を知っておくことや、このような状況になる前に、このお席のお客様とよいコミュニケーションがとれていたならば、状況はさらに好転しただろうと思います。

 

 

ケース3)チェックイン待ちの列に、後から来て割り込みをされるお客様への対応

フロント「お客様、みなさまお待ちでございますので、後ろに並んでいただけますか。」

お客様  「・・・わかりましたけど、母は足が悪いので早くしてもらえませんか。」

フロント「いえ、みなさまに公平に対応させていただいておりますので、お客様だけ特別扱いするわけにはいかないものですから、ご理解ください。」

お客様 「特別扱いしてほしいなんて、言ってないでしょう。あなたもカウンターの中に入ってチェックインをしてくれれば、少しでも早くなるんじゃありませんか。」

フロント「私はチェックイン担当ではないので、申し訳ありませんが、それはできません。」

お客様 「もう、結構です。」

フロント「(なんてわがままな人なんだろう・・・)」

 

 

ケース3)解説

このケースは「他のお客様のいる中で、お客様に申し入れをしなければならない場合」を取り上げてみました。

 

見るからに割り込みだとしても、開口一番「みなさまお待ちでございますので・・・」では、このお客様はずいぶんはずかしい思いをしなければならなかったと思います。

「お気づきでなかったかもしれませんが・・・」と言っても、同じことでしょう。お客様、気がつかないと困ります、というようにしか聞こえません。

 

「ケース1・2でしっかり勉強したのでわかります!」とおっしゃっていただければうれしいです。そうです、ここでも必要なことは《お客様の事情を考えてみること》と《私にできる手助けは何かを考えてみる》ことです。

 

「お客様、ご案内ができず失礼いたしました。実は、こちらからみなさまを順にお声がけさせていただいております。」

と、こちらの非をお詫びするスタートであれば、もう少し話を聞いていただきやすく、何よりお客様にはずかしい思いをさせなくてすんだのではないかと思います。

 

そして、お連れ様の様子に気がついていれば、お客様に言われるより先に、ご提案もできたはずです。

 

「あちらはお母様でいらっしゃいますか。・・・それでは、お母様におかけになっていただけるところをご案内してまいります。お声がけが遅れまして申し訳ございませんでした。」

と、対応できれば待っていただくことに代わりはないものの、気分には雲泥の差があるはずです。

 

そうすれば、「あなたが中に入ればいいのに・・・」と言われることはなく、役割をご理解いただけるはずなのです。

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