株式会社リョケン

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読んで見直す クレーム対応【心構え・抑止編】
(3)クレームを未然に防ぐ・拡大を防ぐ

読んで見直すシリーズ

読んで見直すシリーズ クレーム対応 今回はクレームを未然に防ぐ・拡大を防ぐために必要なことについてみていきましょう。        

1.クレームの発生を防ぐために必要なこと

 

 

「サービスを商品とする以上、クレームは発生するもの」と言って、クレーム対応の方法ばかりを習得していればよいわけではありません。お客様に満足していただくには、クレームを起こさない仕組みと技術を手に入れなければなりません。そして、いざクレームが起きたとしても拡大させず、最小限の対応で解決させることに取り組まなければなりません。

クレーム対応について考える前に、クレームを起こさない方法とクレームを拡大させない方法ついて理解をしておきましょう。

 

新人訓練期間には、基礎研修に加えて、クレーム対応の心得と初期対応について、伝えたいものです。なぜなら、技術も知識も不十分な状態は、もっともクレームの発生に近いところにあるからです。

 

また、アルバイトや派遣社員など、短期雇用の際も、導入時には最低限の行動とことばを伝えておきたいものです。

このレポートを活用し、ひと通り読んでいただくことも、ひとつの方法です。

 

 

*基本の徹底

 

あいさつ・表情・身だしなみ・ことば遣い・基本姿勢はもちろん、基本的な受け答えのレベルが、統一感をもって表現されているかが問われます。できている人いない人など、社員による格差が見えた時、お客様は品質に不安を覚えます。

その不安の目は疑いの目に変わり、あちらこちらに問題を見つけ、バケツに不快感をためやすくなるものです。

 

そもそも、よいサービスには『正確・迅速・公平・丁寧・親切』がそろっていることが求められます。それらを実現するためには、業務の手順や規則という基本を徹底しなければなりません。技術を養い、ミスのない行動を確実に行なえるよう、高い意識を持ち続けましょう。

 

 

*予  測

 

忙しかったから、人が足りなかったから、は言い訳に過ぎません。プロであれば、予測を立てて仕事をしましょう。ものの準備や手順の工夫など、事前に準備をして、お客様を迎えたいものです。

「その場の機転で乗り切ろう」などと甘く考えないことです。

 

 

*コミュニケーション

 

ひとつめは、社員同士のコミュニケーションです。

まず、お客様の状況を共有することが重要です。どこかで設備の不具合があったという情報も、急に団体のお客様のご到着が早くなったという情報も、当事者だけが把握しているのではなく、館内に行き渡っていれば、予測を立てて準備ができるからです。

 

ふたつめは、お客様とのコミュニケーションです。お客様のほんの少しの不快感でも把握できるような人間関係を築くようにしましょう。

何か気になることがあったとき、お客様からいつでもすぐに言っていただければ、こんなに助かることはありません。問題に至らずに手が打てるのです。

 

2.クレームの拡大を防ぐために注意すること

 

前々回(1)で、「クレームと単なる意見とに分けない」ことについて、理解していただけたことと思います。お客様に憤りの表現が感じられるかどうかではなく、ご意見の内容がお客様にご迷惑をかけている内容であれば、クレームとして受け止め、対処すべきだと考えました。
この時の受け止め方次第では、お客様の気持ちを逆なでし、サービスクレームが重なることになるのですから、注意しなければなりません。

 

また、クレームであると受け止めたとしても、次項に挙げるクレーム対応時の注意点をおろそかにしていると、「こんなことだから、ミスが起きるのではないか」「解決してもらえるのか」と、お客様に組織への不信感を与えてしまいます。
対応者の個人的な印象を損ねることに止まらず、組織の印象まで損ねてしまうと、クレームの挽回には相当の時間と尽力が必要になります。
心して、クレームの拡大を防がねばなりません。

 

《クレームの拡大を防ぐポイント》

 

1) お客様の話を聞く姿勢と場所に気を遣うこと

 

クレームを聞く姿勢や場所が、お客様がさらに不快と感じるような状況ではいけません。
他のお客様にちらちらと視線が移ってしまうような態度や、場所を変えるといっても薄暗い部屋の片隅での立ち話では、かえって不快感を重ねるようなものです。

対応する時には、お客様が「自分は大事にされている」と感じていただけるような環境で承ることが大切です。

 

2) 幼さを感じさせないこと

 

「若さ」ということと「幼い」ということは別のことです。
おどおどしている、きちんとあいさつができない、きびきびと動かないなどの態度は、「問題が起きたのは、プロの自覚にかけているからだ」「これでは問題が解決できるはずがない」という気分にさせてしまいます。
お客様の前に立つからには、頼りになると感じていただける態度が求められますが、クレーム対応ではそのことが一層重要になるのです。

 

3) 業務知識を備えておくこと

 

十分な業務知識があれば、お客様の要望に対してどのように対処すべきか判断できます。
お客様のことばを理解しきれなかったり、ささいな質問にも返事ができなかったりすれば、それだけ解決に時間がかかります。時間がかかればかかるほど、クレームは複雑になってしまうものです。

 

4) 身だしなみとことば遣いをおろそかにしないこと

 

身だしなみには、会社のサービスや商品づくりについての考え方や、一人ひとりの仕事に対する取り組み姿勢が表れています。
落ち着きと清潔感のある身だしなみが、いざという時に「この人にまかせれば安心だ」という印象を与え、クレーム解決の助けになるのです。
一方で、身だしなみのだらしなさは、組織のルーズさ・意欲のなさを露呈するようなもので、品質管理が不十分であるとの印象を与えます。当然、複雑なクレーム対応を求められることになります。

 

5) 対応者が変わる際は無責任な印象を与えないようにすること

 

「よくわからないことには無責任に答えず、必ずわかる人に代わってください」と言われます。そのため、お客様に何か言われると、「私ではよくわかりませんので、わかる者に代わらせていただきます」と伝えることが多いように思います。

このように言われたお客様はどう感じるでしょうか。
「何もわからないような人を置いているから、問題が起きるのではないか」と思われても、しかたのないことです。
責任者や答えられる人に代わるときのことばを、ぜひ覚えておきましょう。
「大切なお話でございますので、担当の者に代わらせていただきます」
と言って、話を引き継ぐのです。

お客様には、自分の話を受け止めてもらったという印象と、最初の対応者の責任感を感じていただけるはずです。

 

6) 当事者や第一対応者に任せたまま、周囲が見て見ぬふりをしないこと

 

不慣れな人が対応している時に、「私が対応するから、あなたは下がっていていいわよ」と言わんばかりに、話を引き継ぐ場合がありますが、これも考え物です。理由は、不慣れで対応力のない人に対応させている、という印象を与えてしまっているからです。
そうかと言って、傍でちらちらと気にしながら見ていたりするのも、感じが悪いもの。本人が上の5)のように、上手く引き継ぐことができればいいのですが、必ずしも対処できるとは限りません。

そんな時には、
「お客様、失礼いたします。ご一緒にお話を承らせていただいてもよろしいでしょうか」
とフォローに入りましょう。
ただしこの時、同じ場所にいてこの対応が見えているお客様がいる場合は、あまり対応に時間をかけていると、そちらのお客様の不快感を誘うことになります。
時間がかかる時には、一旦できるだけの対応をさせていただく上で、あらためてご相談させていただくことができるか、お願いをしてみることを考えます。

 

7) クレームの初期対応を身につけておくこと

 

クレームをいただいた瞬間、私たちは平常心でいられなくなります。動揺することが問題なのではありませんが、どのように対処したらよいか思いつかない、何とお客様に言えばよいのかことばが思いつかない、という事態に陥ることが問題です。
こうして学習して知識を蓄えてはいるのですが、思うようにことばが出てくるかしらという不安もあるはずです。私たちは、経験を通じて学び、技術を磨くことが常ではありますが、ことクレーム対応に関しては、歓迎できない方法です。

そこで、知識をいざという時に役立てるために、いくつかの事例を「ロールプレイング研修」の形で疑似体験しておくことをおすすめします。
特に、新入社員や短期アルバイトなど、現場に不慣れな人は、ミスをしてしまった時の対処やお客様から苦情を言われた時のことばなどの初期対応を、ぜひ研修していただきたいと思います。
また、意外にベテラン社員であっても、お客様に印象の悪いことばをうっかり返してしまっていることがあります。

クレーム対応のロールプレイングは、冷静に客観的に私たちの初期対応を見つめてみる良い機会になります。

 

8) 記録を残し、活用する体制を維持すること

 

クレーム対応の経験を組織で共有する仕組みはありますか。同じ失敗を繰り返さないためにはもちろんですが、より重要なことは、対応した人が得たクレームを解決した方法=クレーム対応の知恵を共有することにあります。
そのためには、『クレーム対応記録』の記入用紙を準備し、クレームの事例を対応者に提出してもらえるようお願いし、組織で共有する仕組みを持つことが重要です。
ここで注意しなければならないことは、提出させるのではなく、提出をお願いする、ということです。クレームやミスを責めるために情報を共有するのではなく、知恵を共有するために情報を必要としているのです。

いつになったら書いてくれるのかと言い続けても、元より自分のミスを人に知らせたい人はいないのです。ですから『クレーム対応記録』の副題には、「あなたの経験を私たちの知恵に!」と添えましょう。
文字を書くことが苦手な対応者のためには、所属長が代わって聞いたことを記して報告することも必要でしょう。

記載内容には、原因や対応の経緯などがありますが、ぜひ取り上げていただきたい重要な項目は『解決につながったきっかけ』と『今後の課題』です。

『解決につながったきっかけ』は、まさに次に対応する人の知恵になる部分です。どのように提案したら、受け入れていただけたのか。どのようなことばが、お客様の快いご理解につながったのか。これを共有することが、一人ひとりの対応力を高めます。

『今後の課題』は、同じクレームを再発させないための提案を、対応した人に挙げてもらう項目です。
クレームの再発防止には、多くの場合、新しいルールが必要となります。また、場合によっては、修繕や購入など費用を伴う改善が求められることもあます。
対応者が「ルールを決めるとよい」「検討してほしい」と考えることを上層部に提案し判断を仰ぐ仕組みは、組織を活性化させるものでもあります。

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