株式会社リョケン

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読んで見直す クレーム対応【心構え・抑止編】
(2)クレーム発生の背景

接客サービスの品質向上

クレーム対応 今回はクレーム発生の背景についてみていきましょう。  

1.クレームの性質

クレームを大きく分けると、「物的クレーム」と「人的クレーム」のふたつに分けられます。

 

「物的クレーム」

①施設・備品の不備(破損・汚損・故障・未設置)

②騒音・空調不良

③料理の異物混入

④売店商品の賞味期限切れ など

 

物的クレームは、クレームの根拠となるものを客観的な事実として示しやすいものばかりです。お客様は当然の権利としての要求ですから、まさにクレームという形で提示しやすい性質を持っています。

 

「人的クレーム」

①ことば遣いや態度が悪い

②説明や案内がわかりにくい

③対応が遅い

④依頼や注文を忘れたり間違えたりする など

 

人的クレームは複雑です。サービスを受け止めるお客様の主観によって判断されるものが多く、根拠が客観的に示されにくいものです。(上記④を除く)また、クレームの場では人格攻撃になりがちなため、不満を感じても本人に面と向かって言いづらく、黙っているお客様は少なくありません。

つまり、問題が表面化しにくいという性質を持っています。

 

 

2.クレーム発生のタイミング

物的クレームは、お客様が問題を発見した時に発生します。むしろ、できるだけ早く伝えたいという意識がお客様にありますので、伝えるチャンスや方法さえあれば、早い段階で把握できます。

 

実はこれは、解決に向けてはたいへん都合のよいことなのです。問題の把握が早く、改善が速やかなほど、お客様の感情もよりストレートに回復していただきやすいからです。

 

物的クレームが発生した時は、とにかくすばやく行動し、原因を排除する行動を始めましょう。それが遅れると、対応が遅いというサービスクレームに性質が変化し、お客様の感情の回復が難しくなってきます。

 

一方、人的クレームを言ってこられるお客様は、よほど腹にすえかねたのだと考えるべきです。単一のクレームではなく、いくつかのことが重なってから表面化することが多いことも特徴です。

 

人はそれぞれ不快な気分をためるバケツを持っています。このバケツの大きさは確かに人それぞれではありますが、いずれにしても余裕があれば、感情をコントロールすることができます。

 

しかし、いろいろな場面で少しずつではありますが、不快感や不安・不自由さなどが蓄積されてバケツがいっぱいになってしまうと、コントロールの余地がなくなり、ささいな対応のミスに対しても、一瞬にしてバケツはひっくり返り、クレームということばになってあふれ出してくるのです。

 

表面化した人的クレームは、最後のささいなミスであっても、お客様が憤りを感じているのは、そこにいたるさまざまな不快感のすべてだということです。ですから、今発生したクレームに対処したからといって、そう簡単にはお客様の感情を回復するものではないということを理解しなくてはなりません。

 

 

 

3.接客対応者の心構え

クレームを未然に防ぐためには、バケツに不快感がたまり始めたことに早く気づき、少ないうちに空にしておくことが求められます。

 

ひとつの問題だけでは顕在化しないことが多く、お客様の表情や態度から、早く察知することが重要です。

 

また、私たちには原因を見つけにくいので、その場合はお客様に、

「いかがなさいましたか」と、ご様子をおうかがいをしたり、

「おそれいります、何か失礼なことがございましたでしょうか」

「おそれいります、何かご不自由なことがございますか」

などと心配のお声がけをして、原因を把握しなければなりません。そして、不快感の原因を取り除き、お詫びをします。

 

一人ひとりが「お客様の不快感を無視しない」心構えでいましょう。

やむを得ずお待たせすることや、お客様に合わせた説明が足りずご理解いただけないことがあっても、その一つひとつに誠意を持って対処すれば、バケツに不快感はたまっていかないものです。

 

 

4.気づきにくいクレームの原因

従来から言われる「遅い・忘れた・間違えた」ばかりが、クレームの原因ではありません。お客様の多様化に伴って、むしろ感覚的なことが原因となってきていることに着目しましょう。

 

  • 接客態度  : 無愛想・無神経・無関心
  • 料理/飲み物: まずい・冷たい(不適温)・安っぽい
  • クリンリネス: 臭い・汚い・古くさい
  • 設備/備品 : わかりにくい・使いにくい・センスがない

 

どれも「しかたがない」で済ませるわけにはいきません。お客様それぞれの感じ方だからこそ、基本的に求められるレベルとはどの程度なのかを気にかけておく必要があります。

そもそも、私たちは毎日見ているこれらの状態に慣れていて、感覚が鈍くなっていると思わねばなりません。

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