株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

読んで見直す クレーム対応【心構え・抑止編】
(1)クレームの理解

接客サービスの品質向上

クレームをいただくと、原因がどこにあれ、だれもが困惑し、お客様の態度によっては動揺し、時には自分が対応しなければならない不運を嘆きたくなるものです。 収まるまでは、他のことが目に入りにくくなり、気分は落ち着かず、これでは通常業務がおぼつかなくなってしまいます。 クレーム対応の前に、むしろクレームを避ける方法こそ必要だと考えるべきでしょう。 サービスを商品として提供する現場では、お客様の期待との相違、人的ミスから、クレームを完全に無くすことができないのも現実です。    

1.クレームとは何か

クレームは、英語で「Claim」。辞書によると[当然の権利として主張し要求すること]です。
一般にはもっと幅広く、お客様からの[不満・苦情・要求・批判]という意味合いで使われています。

 

*お客様にとってのクレーム
なぜ、お客様は不満を感じ、苦情を述べ、批判をしなければならないのでしょうか。
その理由はひとつです。「我々がお客様の期待する状態になかった」からなのです。

お客様の期待は千差万別で、「間違いがなければそれでよい」というような方もいれば、「よそでしていたから、ここでもしてくれるはずだ」という方もいるでしょう。
もちろん、すべての期待や要望に応えられるわけではありません。商品として提供できる範囲を超えている場合は説明をし、理解を求めることになります。

 

 

*私たちにとってのクレーム
それでも忘れてはならないのは、「お客様は、よい時間を過ごしたくて我々にいつも期待している」ということです。
私たちがお客様の期待に応えられていれば、お客様は満足できる状態にあり、逆に期待に応えきれていなければ、不満を感じる状態にあります。不満は、私たちに向けてことばとして発信される場合と、発信されない場合があります。いずれにしても、この不満に無関心でいることが、大きなクレームにつながっていきます。

 

「クレームには、お客様の期待が表れている」と、理解しましょう。

 

クレームというお客様のことばを通して、私たちは世の中の傾向やこれからの時代に求められているものを知るきっかけを持ちます。

クレームとは、私たちに現在不足していることや、将来考えていかなければならないことが何であるかを示してくれる、大切な情報源であると言えます。

 

2.「クレーム」と「単なる意見」とに分けない

ところで、お客様の中には感情的にクレームを申し立てる方と、同じように感じていても、おだやかに意見や指摘を述べる方がいます。
気をつけなければいけないのは、そのどちらにしても、お客様は不快であり、不満を抱えてしまっているのだと理解することです。いら立ちの大きさでクレームの重大さを量らないようにしなければなりません。
それが、対応にあたる私たちの大前提です。

 

*クレームも意見も解決しなければならないのは同じ
例えば、お客様から「ラウンジ前のトイレは、手拭き用ペーパーが空になっていた」というご指摘をいただいた場面を想像してみましょう。
この時、いら立ちの見えるお客様には、「ご面倒をおかけして申し訳ございませんでした。すぐに見てまいります。」とお詫びが口をついて出るでしょう。

その一方で、おだやかに話されるお客様には、「そうでしたか。見ておきます。」や「そうでしたか。清掃の者に言っておきます。」と返答するにとどまることがあるかもしれません。「お知らせいただき、ありがとうございます。」と、ことばが重なればまだましですが、それにしても、そのお客様が受けられた戸惑いや不快感に対する『お詫び』が表現されないことがしばしばです。

さらに、よほどきつく言われたのでなければ、このような一件はいわゆる「クレーム」として認識されませんから、手拭き用ペーパーの補充が終わればどこに報告されることもなく、解決したことになってしまいます。
本当に解決したのでしょうか。

 

答えは、ノーです。
まず、ご指摘いただいたお客様の気持ちの中に、すっきりしない感情が残ってはいないでしょうか。この後の項目で、詳しくお伝えしますが、ことばにならない不快感を蓄積させることは、その後の出来事を悪い方へ引っ張るおもりをつけるようなものです。少なくとも、この時点で、お客様の中にある小さな不満の芽を摘み、お客様の気分を回復させることに気を配らなければなりません。

問題の処理だけでなく、お客様の気分に対処することは、事の大小によらず必要です。

 

また、もうひとつ課題があります。偶然の問題なのか、清掃のタイミングや繁閑による頻度や量の調整などが必要だったのかが検証されないので、再発を繰り返す可能性があります。あるいは、どこかの時点でお客様がいら立ってご指摘され、問題があったと気づくのかもしれません。しかし、この程度のことで、そういら立つお客様もいないでしょうから、多くの場合は私たちの知らないところで、お客様に不快感を与え続けることになるのです。

 

*クレームも単なる意見も我々の課題
お客様の表情や口調で、クレームか単なる意見かを区別しようとしてはなりません。
本来、問題に対するお客様のご指摘は、すべてクレーム扱いです。

私たちは、お客様の表現や問題の大きさによらず、真摯に受け止めてことばを返し、対処し、そして繰り返すことのないよう組織に働きかけをしなければなりません。

その意味では、アンケート検討やクレーム報告の仕組みがあるところでも、現場で即解決したことを『本日のご指摘報告』という仕組みで把握しているところはあるでしょうか。この仕組みを持つと、小さいけれど取り組むべき改善課題をより早く発見できるだろうと思います。

 

 

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