株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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業務効率化への取り組み(1)

旅館経営タテ・ヨコ・ナナメ

商品・販売面に関するテーマをここで一区切りとし、今回より「業務効率化への取り組み」について述べる。 旅館におけるコストは、大きく売上原価、人件費、諸経費に分けられるが、以前も述べたように、旅館は「労働集約型」の産業であり、三つのコストのうち人件費のあり方が収益構造を最も大きく左右する要素といえる。以前「削ぎ落とすべきコストを考える」と題し、人件費効率化の着眼点にも一度触れたが、再びここに着目して別の角度から考えていきたい。

人件費と労働

 初めに、少々理屈っぽい話になるが「人件費」と「労働」というものについて考えてみる。
 「人件費」という用語はコストの概念である。コストである以上、経営的観点からはなるべく少なく抑えることが望ましい。ただしこのコストは二つの点で他と性格が異なる。
 第一に、その支出先は人…「社員」であり、会社の長期的な資源であるという点だ。従って、単純になるべく低く抑えればよいというものでもない。
 第二に、「人件費」は金銭という形で定量的に表わされるが、その対象は量的な測定が困難な「労働」という無形の行為である点だ。一般に、労働には時間や日数といった物差しを当てる。賃金計算ではこれを基準にするしかないが、「労働の価値」を考える場合、いきなりそこから出発するのは必ずしも適切でない。なぜならその中身が不定形だからである。
 また労働力となる「人」は、外から購入する商品のように、仕様や機能が客観的に示されているわけではない。このため、同じ時間の労働でも、人によってやり方によって効率が違ってきたりする。だから人件費をどうにかしようと考えるなら、「労働の中身」をもっと見る必要がある。そして労働をいかに有効に価値に置き換えていくか?…ここにこそ人件費の効率化を実現する重要なカギがある。
 ちなみに、人件費の効率化を論ずる際、売り上げなどの金銭的成果と結び付けて適正を図ろうとする議論―「成果主義」が必ず浮上する。これは確かにひとつの方向である。しかし旅館の業務は必ずしも売り上げなどと直接結びついていないものが多いので、ここではひとまず置いておくことにしたい。いわゆる「成果配分」については別途考える機会を持ちたいと思う。

業務・作業・動作

 さて、「労働」によって執り行われるのは「業務」である。業務はいくつかの「作業」によって構成されている。これをさらに分解すれば、最小単位である「動作」に行き着く。旅館では、まず「業務」の内容や形態がかなり多岐にわたっている。またこれを構成する「作業」も多種多様だ。 「業務」といい「作業」あるいは「動作」といい、業界として定まったスタイルが確立されているわけではない。ほとんどがその旅館、旅館の流儀で行われている。
 今、旅館業の大きな課題は生産性の向上である。生産性の向上、言い換えれば人件費の適切な運用を図るには、これら「業務」「作業」「動作」の各レベルに科学的な目を向けていくことだ。

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野 洋一)

※当記事は、2016年9月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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