株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

利用ニーズの変化と対応(3)

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

前回は、「2人利用を基本に商品と売り方を組み立て直してみよう」という提言のもとに、現状の客室で「個人客向けオペレーション」によって価値を高めるためのヒントをお伝えした。 今回は客室の改装を前提に考える。あらためて確認するが、旅館の客室は「2人利用のジレンマ」をどう乗り越えるか? が大きな課題である。(その背景は前々回をご参照いただきたい)

2人利用を基本とした客室

 伝統的な旅館の客室は一般に4~6人利用をベースに造られており、4~6人で泊まる場合にその広さが活かされる。しかし2人で泊まる場合、「それだけの広さの中に2人で泊まる」というに過ぎない。それは
それで確かに贅沢感はあるが、言ってしまえば、ただ「広い」だけであって、2人のお客さまにとってその価値が2倍、3倍になるわけではないのである。
 そこで、「2人でも泊まれる部屋」ではなく、「2人なりの料金をいただける部屋」、つまり2人利用時に、より高い満足度の得られる部屋であることを考え
方の基礎に据えたい。
 まず基本的に2人利用を想定してベッドの導入を考える。そして本間と広縁を「和風リビング」として一体化する。押入れや、場合によっては床の間を廃し
て、代わりに洗面・トイレ周りやデスクといった居住性、贅沢感向上のためのスペースに転換する。さらに座卓を置くのをやめて小さめの応接セットを入れる。
これらによって、「2人利用にとって最適な」広さと居住空間づくりを行うのである。
 ただし「2人専用」とはしない。2人利用が多くなってきたとはいえ、3人、4人での利用ニーズはまだまだある。「2人専用」としてしまうと、3人以上の
ためにはまた別の部屋を用意しなくてはならない。またそれなりの広さの部屋を、常に2人ベースで販売していては、客室の十分な売上効率は得られない。だ
から「2人利用に最適な造り」としながらも、最大定員は3人ないし4人として、フレキシブルに対応できるよう考えておくことがポイントである。
 小さなお子さま連れの場合は、ベッドをつけてハリウッドスタイルにすれば、添い寝需要にも対応できるようにしておく。
 3人利用の場合は、トランドルベッド(親子ベッド)やソファベッドを活用して、チェックイン前のセッティングでトリプルのしつらえに仕上げておく。これ
で2人利用時、3人利用時は布団敷き・上げを行う必要がなくなる。
 4人利用の場合はツインベッドに加えて布団を2組敷くことになる。そのための布団はベッド下などに収納するか、同タイプの客室数室ごとに共有の押入れを
設けて収納する方法が考えられる。
 「4人(5人)の部屋に2人」という発想から、「2人の部屋で3人、4人にも対応」の発想へと転換するのである。

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2016年6月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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