株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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利用ニーズの変化と対応(2)

旅館経営タテ・ヨコ・ナナメ

近年、旅館において2人宿泊の比率が高まってきている一方で、部屋の造りや運営、料金体系の構造がそれに適応したものになっていないこと、そしてそれは旅館の「思惑」と現実の「ニーズ」とのギャップにあるのではないか、ということを前回お伝えした。 そこでこのギャップを埋めるために、どのような対応をとっていくべきかについて考えていく。

2人利用からの発想

 結論から言えば、2人利用を基本に商品と売り方を組み立て直すことを提案したい。
 2人のお客さまに、これまでよりも高い価値を提供して、それに見合った料金がいただけるように考えるのである。着目すべきポイントは「過ごし方」だ。
 旅館は利用目的によって過ごし方が違い、満足のよりどころとなる価値も変わってくる。団体・グループの場合、多くは「懇親」が目的であり、客室は「寝る場所」ないし「語らう場所」である。極論すればその役割が果たせればよい。
 一方、個人客の多くは「保養=ゆっくりする」を目的としている。客室は滞在中に一番長い時間を過ごす場所であり、そこでの居心地は重要である。
 客室での居心地をアップさせる手っ取り早い方法は、客層に応じてサービス用品(アメニティなど)を変化させる(加える)ことである。
 個人客に対しては、バスアメニティやコスメを充実させたり、女性向けのアメニティセットを提供する。お決まりの浴衣だけでなく、特別な室内着やバスローブを提供することも考えられる。また部屋の飲み物類も、団体客にはこれまで通り「お茶セット+茶菓子」で対応する一方、個人客には「お茶セット+コーヒー・紅茶・ハーブティー+茶菓子+スイーツ」といったものを提供する。
 これらも、ただ置けばよいという発想から少し踏み込んでみよう。飲み物やスイーツといったものは、冷蔵庫上の空きスペースや座卓の脇などに、それなりに見栄えのする「茶器入れ(あるいはトレー)」を置き、そこに品よくディスプレイする。アメニティや室内着なども、ただ洗面台の上や服入れの中に置くのでなく、いっそのこと本間の畳の上に衣裳盆やザルを置いてそこにきちんと並べて見せるのだ。さらにこれをきれいな敷き物の上に置けば、一層「わざわざ感」が醸し出せる。
 
 考え方を、単に「必要なモノのセッティング」という発想から「しつらえとしてプレゼンテーション」に切り換えてみることである。ほんの少しの備品追加と手間かけを行うことで、今の客室そのままでも、入室の瞬間、お客さまに感激を与えることができる。サービス用品にこれまで以上のコストをかけることについて抵抗を感ずる向きも多いだろう。また団体客と個人客とでいちいち対応を変えることについて、「そんな面倒なことはやってられない」という声も聞こえてきそうだが、それが利用客の満足度、ひいては上乗せしたコストの何倍かの料金差につなげられると思えば、真剣に考えてみる価値がある。

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2016年6月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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