株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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お届けする経営のヒント-

「未来構築元年」旅館・ホテルのこれからの事業モデルを考えよう

今後の経営戦略

コロナ禍を機会として捉え、事業モデルを転換している宿があります。ピンチをチャンスとして捉え、先に向けた事業モデルの再構築、収支バランスの調整を図ろうとするものです。事例の中から、自館のタイプに近いケースを探り、検証してみてください。今のままで良いのか? 何を変えるべきか? その為のステップをどう計画するか? 課題として考えていただきたいと思います。以下、事業モデルを変更した(しようとしている)3つの事例をご紹介します。

 

 

事例①「マルチ営業型」から「宿泊営業特化型」へ大転換したA館

A館は75室350名(10室は洋室シングル)の中規模旅館でした。長期間の休業を経て、営業方針を大転換し、再出発しました。休業前は売上高を約10億円(13,333千円/1室当り)獲得し、80%弱の客室稼働を維持する稼働の高い旅館。その上で、宿泊客と同等数の宴会・日帰・婚礼等の地元客を受け入れており、常に忙しい状況でした。

 

しかし、思うように利益確保ができないことから、売上項目別の収支分析を行い、利益率の悪い売上項目を諦め、収益性の高い売上に集中することで利益確保に重点を置いた営業戦略へ切り替えました。宿泊需要に特化することにより、経営資源を集中し、シフトを安定化させることで、売上高が70%に低下してもキャッフュフローの源泉である償却前営業利益の増加する方向を目指しました。

 

営業再開後、半年が経過しましたが、今の時点までは意図した成果が出ています。コロナ禍の中では、稼働アップを図るための人員増を行うことを慎重に見極めているため、宿泊ニーズに対してもMAX対応しないという制限を掛け、ロスの無い運営体制を維持しています。

 

 

事例② 54室の内の2フロア分18室を2名定員の和風ツインに変更したE館

E館は54室254名の営業規模を54室174名へ、大幅に収容減となる客室改装を行いました。グループ団体の廉価販売を縮小し、個人宿泊客の客単価を向上させることで売上高を確保する方針へ転換したのです。54室の内、2フロア18室を全面リニューアルすることで、個人客用の新たなコンセプトによる客室カテゴリーを前面に打ち出すようにしました。

 

客室の3分の1を2名仕様の和風ツイン(内2室は洋室シングル)とする決断は、2名仕様の部屋とすることで、居心地を重視した客室商品を生み出すためのものでした。客室滞在時間が長くなる利用特性を考慮し、アメニティ、リネン類を更新するとともに、客室内でのサービスアイテムを工夫したことで、新たなグレードを生んでいます。結果として、宿泊客単価は3,000円以上アップし、客数が減少しても売上高を維持できる目途が見えてきました。

 

また、姉妹館のH館は新たに2名定員の高質客室を2室増設、既存の高質客室2室のベッド化を実施しました。更に、個人客重視を進める意図で、和風ツイン6室、洋室シングル11室の整備改修工事を春のオープンへ向けて進めています。

 

ベッド仕様とすること、1室の定員をベッド数で固定することにより、寝具のセット、布団上げの業務の減少や、お客様滞在中の客室内作業を無くしています。これにより、飛躍的に業務の効率が上がると同時に、プライベート空間の担保による客室の居心地アップ、お客様評価の向上を図れるメリットも追求できます。H館では、今後も既存客室のベッド化を計画的、段階的に整備していくものと思われます。

 

 

事例③ 動線上の売店・クラブを個人客向けパブリックに変更したK館

K館は直近10年間に92室の客室の大半に段階的にベッドを導入しました。同時に宴会場の改修を継続的に行い、個人客の食事会場のテーブル数を確保するなど、運営の効率化を大幅に図ってきました。団体客、ツアー客に頼っていた集客の方針を大幅に転換する必要を以前より感じていたからです。2005年より経営革新計画をスタートし、現在は第二次の経営革新計画の推進時期にあたります。

 

今年の事業再構築補助金の制度を活用し、手つかずであったロビーから売店・クラブのエリアを大幅にイメージ刷新するべく、改修計画を進めています。昭和の時代を色濃く残す、カラオケ&ショークラブを解体し、セレクトショップスタイルの売店を新設、既存の売店はフリードリンクサービスやワーケーション機能を備えたリラックスラウンジに模様替えし、ロビーラウンジ、売店と連動したお客様滞在スペースとして、大変身する計画です。

 

客室や料理の改善と同様、現在、将来の個人客の志向に合わせたパブリック施設を創り、少数運営の可能なサービススタイルを導入することで、大幅なイメージアップを図ろうとするものです。

 

このような商品整備を通じて、年々客単価の上昇を実現し、個人客比率が高くなっています。今後の推移に注視したい事例です。

 

 

上記3つの事例含め、事例①の具体的な施策内容や「旅行単位の個人化が進むと予測する日常生活の変化」、「高収益経営を目指すこれからの事業モデル案」等をまとめたレポートは下記からご覧いただけます。

レポート:「未来構築元年」これからの事業モデルを考えよう

 

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