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利用ニーズの変化と対応(6)

旅館経営タテ・ヨコ・ナナメ

ここ数回にわたり、客室のあり方について述べてきた。今回は畳宴会場の見直しについて考えたい。

宴会場の用途

 宴会場にまつわる近年の象徴的な対応は「椅子・テーブルの導入」である。これには二つの大きなニーズ変化の流れがある。
 ひとつは、高齢化の進展である。畳に座布団というスタイルでは、身体的に困難なお客さまが急速に増つつある。また若い人でも、ほとんど椅子生活という日常の中で、畳に座る食事スタイルは敬遠されるようになった。このため「畳敷きの宴会場に椅子・テーブル」を導入するところが多くなってきた。
 もうひとつは、団体客の減少と個人客の主流化である。旅館の食事といえば、昔は部屋出しか宴会場というのが相場であった。個人客向けには、これまでも「料亭」と呼ばれる食事会場を備える旅館は多かったが、個人客比率が一段と高まるに及んで、部屋出しやこれら施設では対応しきれなくなってきた。他方、かつて大活躍した大きな宴会場が無用の長物となってきている。かといって、すぐさまそこに多額の費用をかけて改装もままならないことから、「個人客食事会場としての宴会場利用」が進んでいる。
 そしてこの流れが先の「宴会場に椅子・テーブルスタイル」と合流する。

 ここで考えたいのが、宴会場を個人客向けに「専用化」することである。
 程度の違いこそあれ、多くの旅館にとって宴会場はこれからも必要であろう。ただしその数や広さが適正かどうかは見直してみる余地がある。全体としての使用頻度などを検証して、余剰気味ならいっそのこと、その一部を個人客向けと割り切ることを検討したい。
 宴会場としても使えるようにしておくのは、施設の用途効率だけで見ればその方が良いかもしれない。しかし、宴会場としてはともかく、個人客向け食事場所として、果たしてそれでお客さまが納得する場となっているかは疑問である。また椅子・テーブルなどのレイアウトをその都度変えるような作業は、今日の労務事情に鑑みてなるべく避けたい。 

 宴会場としての使用を考えないと割り切るならば、施設の造作は宴会場でも、それはダイニングとして捉えることができる。そうすると、例えば次のような発想ができる。
 まず場の雰囲気づくりである。宴会場にただ椅子・テーブルを並べただけでは、「座椅子・座布団よりまし」というレベルに過ぎないが、壁紙や照明を工夫するなど、ちょっとした模様替えで雰囲気はガラリと変わってくる。また衝立や天井からの吊りもので、卓ごとに軽い仕切りを設けることも可能だ。
 厨房からのサービス動線に近い場所にキッチンをしつらえたり、屋台形式で調理器具を据えたりして、ライブ感ある食事会場とすることも考えられる。ただしこの場合、ただ単に作業の都合や楽をすることだけ考えてやると失敗する。あくまでもお客さまに喜ばれるために何ができるかを第一に考えたい。ポイントは「出来立て料理の提供」と「提供方法のショーアップ」だ。
 分割使用の必要がなくなれば、入り口を1カ所に絞ってそれなりの構えにすることもできる。また各会場に横から入るための廊下や、場合によっては、裏のサービス廊下も不要になる。これら廊下を会場に取り込めないか? 会場が広く使えるだけでなく、廊下に面した景色が活かせる場合もある。ただしこれは、廊下がその先につながる用途を持たない場合に限られるが。

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2016年8月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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