株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

推進のカギはモチベーション

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

労働力減少の時代に対応するには、否応なく労働の価値を高めていかなくてはならない。そのための方策のひとつは提供商品や売り方を戦略的に組み直してパフォーマンス・アップを図ること、もうひとつは削ぎ落とすべきコストを削ぎ落とすことであることをこれまでにお伝えしてきた。しかしいずれにおいても重要なカギは、人のモチベーションをどう高めるかということである。

1.創造性ある仕事を求める

 コストパフォーマンスを高めるには、これまでのやり方、固定観念からいったん離れて物事を捉え、大きなことから小さなことまで取捨選択、組み換え、エネルギーの集中投入といった判断と実行を進めていく必要がある。
 こうしたことはかなり「創造性」を要する仕事であり、これまでもっぱら経営者の仕事であった。悪い言い方をすれば、経営者はそれらを専決事項として囲い込んで、社員にそのような能力の発揮を求めずに来た。
 一方で社員も、長年の経験から「それは社長が考えること」という意識が定着して、多くの場合、「日々の業務をどう事無く遂行するか」という枠の中でしか物事を考えない習性がしみ付いてしまっていたきらいがある。
 かつてはそれでも良かった。しかし今日、それだけでは足りなくなってきている。またそれでは人的資源を有効に活かしているとは言えない。
 旅館業はサービス業であり、労働集約型産業であり、お客様と直接の接点がある商売である。だからこそ社員の創造的な知恵と自律的な行動を引き出すことは必要があり、意義があり、効果があるのだ。

2.モチベーションを引き出すカギ

 パフォーマンスの倍加を図るには、幹部をはじめとする社員一人ひとりが気持ちの中に高いモチベーションを持ってもらわなくてはならない。そのためには、経営者となるべく近い意識を持ってもらうことがぜひとも必要になってくる。その条件として次の四つのことを掲げたい。

ⅰ)未来のすがたを描く

 10年後にどんな旅館(会社)になろうとするのか、これから進もうとする道と、足元の取り組みとの「つながり」を理解させること、「それをやることにどんな意味があるのか」を示すことである。また社員個々の未来、すなわち生活の向上を示すことも大切である。

ⅱ)巻き込む

 「これをこうしなさい」だけでなく、「何をしていくべきか」、「どのようにしていくべきか」を、これまで以上に考えてもらうようにする。そのためには、「考えさせる場」、「創造的な発想を求める場」、「任せてやらせる場」を意識的に作っていく必要がある。

ⅲ)利益を意識させる

 会社の業績は最終的には利益である。ところが「幹部」と呼ばれる人たちが、売上額は知っているが利益についてはまったく知らないというところも多い。これでは「コストパフォーマンスを高める経営」と言っても本当の意味で理解されない。利益概念を含んだ一定の経営公開が必要である。

ⅳ)見守る・認める

 自発的な思考や行動を促すためには「放置」は禁物である。より高度な能力発揮には、より高度な発想や判断、行動が必要となってくる。それなりにストレスも大きくなるだろう。そういうものを求める以上、それをしっかり見守り、成果を認めてあげることが大切になってくる。任せることと放置することとは違うのである。

(株式会社リョケン 代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2015年7月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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