株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

可能性に目を向ける

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

2015年、弊社が旅館業界に投げかけた指針の言葉は、「10年後の生き残りを目指す パフォーマンス倍加戦略」である。

 「10年後の生き残り」とは、「10年後でもなんとか生き残っている」ことを目指すのではない。「10年後にこうなっていたい」を目指すことである。そうでなくては、経営は防戦一方となってしまう。「攻め」の思考が出てこない。

 企業経営は生き物である。ベクトルをどの方向に向けるか、方針の立て方、施策の進め方、実行の度合いによってどうにでも変わる。ことに客商売である旅館には、「お客さまを喜ばせたら勝ち」という側面がある。だから面白い。だから「パフォーマンスの倍加」も可能になるのである。自館が「どんなお客さまに、どんな場面で、どうやってお客さまを喜ばせるか」を真剣に考えていくことが、「10年後の生き残り」への道を切り拓くことにつながる。

 旅館はもはや寝泊まりや食事などの「機能」だけを提供するものではない。人に心身のやすらぎ、うるおい、温かさ、喜び、感動、時のぜいたく、夢といったものを売る商売である。それらをかたちにし、表現するやり方は、まだまだ無数にあるはずである。

 そして視点を変えれば、そのために使える資源もたくさんある。例えば周辺の観光資源、例えばお客さまとの関係、例えば地域で産み出されているこだわり商品、例えば先端技術・・・こういうものも、取り入れ方によってはいろいろと活かす途があるのではないだろうか。またその使い途を、「10年後」というものを視野に置きながら本気で検討したことが、これまでどれほどあっただろうか、振り返ってみていただきたい。

 問題は、それをコストとのバランスを図りながらどう実現していくかである。そこに難しいハンドリングが求められる。経営は遊びではないので、楽しいことだけやっていればいいわけではない。必要な利益確保のために脇を固めることも必要である。効率や効果を高めるために変えていくべき余地も随所にあるはずだ。しかしそこにこそ経営の妙味がある。

 お客さまを喜ばせるための資源活用の余地も、収益性改善のための変革の余地も、それらはすべてより良い経営を組み立てていくためのネタであり、「可能性」と捉えることができる。

 「無い」と思えば無いものばかり・・・しかしそう思っては見えるべきものも見えなくなる。経営を良くしていくには、まずあらゆる可能性に「ポジティブな目」を向けてみることである。そしてその中から「何を選択するか」、「何を軸にしていくか」を深く考え、さらにそれらを具体的な「課題」に置き換えて、力強く推進していくことである。

 繰り返す。可能性に「前向きな目」を向け、「未来図」を描き、そこに向けて「攻め」の発想をもって立ち向かっていただきたいと思う。

(株式会社リョケン 代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2015年7月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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