株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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利用ニーズの変化と対応(1)

旅館経営タテ・ヨコ・ナナメ

旅館利用の個人客主流化にともない、商品や受け入れ対応のあり方をどうしていくべきかについて考えてみたい。

2人利用のジレンマ

 旅館利用の個人客主流化にともない、商品や受け入れ対応のあり方をどうしていくべきかについて考えてみたい。
 旅館の1室当たり利用人員は、近年ずいぶん少なくなった。団体・グループの利用が大幅に減っただけでなく、個人旅行でも夫婦・カップルなどの占める割合が高くなって、平均は年々「2人」に近づきつつある。
 日本旅館協会の「営業状況等統計調査」(平成26年度版:平成25年度データに基づく)によれば、1室当たり平均宿泊人員は2.73人である。
 一般的な旅館の客室面積は、10畳バス・トイレ・広縁付きで40~45平方メートル、12.5畳なら50~55平方メートルというところだろう。仮に40平方メートルとして、4人で泊まる場合の1人当たり面積は10平方メートルだが、2人で利用すると20平方メートルとなる。
 ちなみに、前掲「営業状況等統計調査」によれば、旅館の客室1室当たり延べ面積(客室以外もすべて含む)は平均で142平方メートル。これに対するホテルのそれは55平方メートルであり、2.5倍ほどの開きがある。この差は主に1室の定員の違いによるものなのでそれ自体は驚くに当たらないが、問題は旅館がその定員通りに利用されなくなってきていることにある。
 理屈としては、2人なら2人に適したサイズの部屋(10平方メートル×2=20平方メートル)にすればよいわけだが、ビジネスホテルならともかく、旅館(特にリゾート)の客室としてはサマにならない。
 一方、料金はほとんどの旅館でルームチャージ制ではなく、「1泊2食付、お一人さまいくら」の料金体系となっている。1室4人利用で1人1万5千円とすれば、1室の売り上げは6万円だが、2人利用で同じ売り上げをあげるためには、1人3万円いただく必要がある。その値段で売れれば問題ないが、現実にはなかなかそうもいかない。
 その結果どうかといえば、多くの旅館が「世間相場」に寄り添うように「4~5人並み料金よりいくらか高い程度」の料金でやっているのが現実であろう。
 しかしこれでは採算に合わない。料理原価などは2人なら2人なりで収まるので、見た目はそれでも十分な儲けが得られるように錯覚しがちだが、施設にかけられたコストが回収できない。経営は資本コストまで視野に置いた収益性を考えなくてはならない。
 さて、それではこのジレンマはどこから来るか?…旅館の「思惑」と現実の「ニーズ」のギャップであると考える。
 シーズンや曜日によっては1室4人、5人での利用が十分見込める日もあるので、ほとんどの旅館では「稼げるときに稼ぐ」ことを念頭に、それなりの定員容量のある部屋を標準として備えている。またオペレーションもそうなっている。しかし見込める市場ニーズはそれと食い違ってきているのだ。
 果たして思惑通りに「稼げている日」が年間どれくらいあるか? 今の「客室タイプ構成」や受け入れ運営、料金設定のあり方が「利用のされ方」にマッチしているか? こういうことを冷静に捉えなくてはならない。そしてそのギャップを埋める対応をとっていくことが求められている。
 ではどうするか?…その方策を次回述べたい。

(株式会社リョケン 代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2016年5月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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