株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

パフォーマンス・アップの着眼点(2)

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

パフォーマンス・アップのために何を「選択」し、どこに「集中」するべきか? について、前回に引き続き考える。

3.自館の良さの洗い直し

かつて自館は何によって支持されてきたのか?・・・心を解きほぐすようなもてなし、豪快な料理、味へのこだわり、贅沢なゆとり感、お客様一人ひとりとの関係を大事にする風土・・・ではなかったか? ところが、長く厳しい経営環境にさらされてきた中であれこれやっているうちに、いつしかそういう「大事にしてきたもの」を見失い、迷走して、「あの旅館はこういうところが良かったけど、最近はどうもねぇ。」とささやかれているかもしれない。
もう一度原点に返って「自館の良さ」を見直し、その立て直しを考えてみることは、パフォーマンス・アップの重要な着眼点である。
ただしそのままではいけない。お客様の数が減ってきているとすれば、何か歯車のかみ合わないところがあったからである。まったく同じやり方がいつまでも通用するわけではない。だから、かつての「良さ」を再確認したら、次にはその「良さ」が今でも有効であるか、お客様にとって無価値・低価値なもの、時代遅れの「古臭いもの」になっていないか、冷静に査定してみていただきたい。自館の「良さ」を見つめてみることは、同時にそれを再点検することでもある。
そしてやり方を変えたり、削ったり、強調したりすることを考えよう。自館の良さを新しいかたちでプレゼンテーションすること――「アイデンティティのリニューアル」である。

4.ブランドづくりをいっしょに考える

ブランドとは、一口に言えば企業や商品が消費者に伝える「価値の保証」であり、一方で消費者の側につくられた、この会社なら、この商品なら・・・安心できる、大丈夫だ、好きだという「信頼・好感」である。ブランドイメージが高まることは、お客様の購買(利用)につながるだけでなく、より高い価格で買ってもらえることにもつながる。
一人の買い手として考えてみるとわかりやすい。例えばどこかの家を訪問する際、手土産にするお菓子を、どこのお店で買うか? それはどうしてか? 「老舗だから」、「有名だから」、「おいしいから」・・・いろんな価値があるだろう。しかしそれらは、そう思わせる裏付けを見せられたり、感じさせられたりするうちに、いつしか刷り込まれた結果なのである。ではそれらをどのようにして見せられたか? 感じさせられたか?・・・そこを考えていくことがパフォーマンス・アップの大きなカギになる。
良い商品にしようと思ったら、良いものを使ったり、手間をかけたり、工夫したりするだろう。しかし同じやるならそれが自社・自館・自館の商品にとってのブランド価値アップにつながるようなやり方をいっしょに考えていきたい。
コツは、何かしら価値を高めようとする際、同時にそれを「お客様にわからせる、感じさせる、伝わりやすくする」にはどうするか? を意識することだ。銘菓にはよく由来書きのような「栞」が付けられている。高級なものはパッケージのデザインも良い。陳列のし方が繊細で、商品の扱いはうやうやしい。そのへんがヒントである。

(株式会社リョケン 代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2015年5月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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