株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

磨け! 独自価値(12)

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

改めて申し上げるが、「磨け! 独自価値」の言葉は、弊社が発行する「旅館の経営指針」において、昨年掲げたテーマフレーズである。 ところで、その前年の「経営指針」で掲げたテーマは「挑み楽しむ旅館経営」というものであった。これについて簡単に触れておきたい。

挑み楽しむ

旅館を取り囲む時代背景には、競争の激化や人手不足など、いろいろと難しい問題があるが、だからといって難しい顔をしているだけでは、前向きな発想も前に進む力も出てこない。

旅館業はお客さまに、広い意味での「楽しさ」を売っている。本来「楽しい商売」でなくてはならない。困難な状況にあるからこそ、あえて「楽しい商売」なのだという考え方に立ち返る必要があるのだ。楽しまずして、良い旅館経営はできない。それで「もっと楽しみましょう」と提言した。

ただしそれは、現実を離れて極楽トンボのように過ごすことではない。むしろその逆で、現実を直視して経営向上を目指し「攻める」ことであり、その攻めにつながる「チャレンジのプロセス」を、社員も経営者も楽しむことなのだ。

つまり「挑むことを楽しむ」というのが、このフレーズの真意である。

 

希望の種をまく

さて、「独自価値」は、商売の武器となり、経営の強みとなるものである。進むべき方向が見いだせずに迷っている経営者には現状打開の糸口としていただくことを、またすでに強い経営基盤を築かれている経営者には、それをもっと強固にしていくための指針としていただくことを、このテーマに込めている。
しかしこれだけではない。もう一つ込めたのは、「独自価値」というものを社員や経営者ご自身が「挑み楽しむ」ための「希望の種」としていただきたい、という思いである。

種は、まいたその時からそこに思いを託すものだ。やがて成長し、実を結ぶことを夢見て、水をやり、肥料をやり、腐らせないよう、日照りに乾かないよう育てることが「楽しみ」となる。

「今はまだ小さいが、これをやっていけば育つ、そしてきっと良い実がなる」―経営者と社員が、そんな共通の希望を託せるもの、それが「独自価値」なのである。
「磨け! 独自価値」のタイトルには、「そこからつなげる足元と未来」という副題を付した。独自価値を持つこと、また持とうとすることで、「足元と、そこから続く未来への『道』が明るく照らし出される」…そのようなイメージである。

企業にはその時々、それぞれに置かれた状況があり、今好調なところもあれば、出口の見えない戦いに苦しんでいるところもあるだろう。しかしいずれの場合も、「不作為(何もしないこと)こそ最大の敵」である。

「独自価値」を考えることは、小さければ小さいなりに、大きければ大きいなりに、未来に向けての「打つ手」を探すことになると考える。旅館商売は、いろんな価値を生み出せる商売。だから未来に向けての価値づくりというものを、もう一度改めて見つめてみよう。そして合わせて「希望の種」をまくことを、社員とともに考えていただきたい。

 

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2019年3月に観光経済新聞に掲載されたものです。

 

 

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