株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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業務効率化への取り組み(25)多能化を実現する要件

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

マルチタスクには「労働人員の効率化」と「労働者の多能化」という二つの効用があること、

ただしこの二つは並列的なものではなく、

 
一、多能化しなければ人員効率化はできない。

二、多能化しても人員効率化が図られなければ生産性の向上にはつながらない。

 

という関係にあることを、前回お伝えした。そこで今回は、この二つのうちの一つ ―「多能化」を実現するためにどんなことが必要になるか? について考えてみたい。

 

 

多能化を実現する要件

以下に掲げる「要件」の並び順は、多能化に取り組む際の「手順」でもある。はじめに言っておくが、これらは弊社が実際に、複数の旅館でお手伝いをしてきた中から導き出されたものであって、決して机上の空論ではない。こうした手順を考えずに見切り発車すれば、まず間違いなく途中で壁に突き当たるか、結果的に回り道をすることになるとお考えいただきたい。

 

(ⅰ)習得業務の範囲決め

どんな範囲の仕事を覚えてもらうのかを、まず決めなくてはならない。例えば「夕食の食事提供」について他部署のスタッフに仕事を覚えてもらうとして、そのうちどこからどこまでの範囲を覚えてもらうのか―食事提供の一切ができるようにするのか、あるいは会場入り口付近までのバック業務をサポートできるようにするのか、はたまた食事開始前のセッティングだけできるようにするのか、ということである。言うまでもなくこれは、その後サポートしてもらう仕事範囲のイメージとセットだ。

 

(ⅱ)指導項目の明確化

仮に喫茶の仕事を覚えてもらうことを目標にする場合、これを分解して必要な指導項目を明らかにしておく。

開店準備、コーヒーはじめ各種飲み物作り、オーダー受け、提供サービス、会計、バッシング、食器洗い、店の後片付け、コーヒーマシンの手入れ…といった内容だ。これを曖昧にしておくと、何をやらせたらいいのかわからない中途半端な応援スタッフが出来上がってしまう。また「それは教わっていません」などという不協和音にもつながる。

 

(ⅲ)マニュアルの用意

マニュアルについて詳しいことは既に述べた(※)ので、ここでは省くが、(ⅱ)の項目ごとに用意されることが望ましい。ただし現状でマニュアルらしきものがない場合は、「指導をやりながら作っていく」でもよかろう。指導は、必ずしもこれがなければできないというわけではなく、その出来上がりを待っていては、多能化の目的実現など、はるかに遠のいてしまいかねないからだ。
次回は引き続き、(ⅳ)研修(訓練指導)、(ⅴ)履修項目の見える化、についてお伝えしていく。

 
※ 本連載  <業務効率化への取り組み(13)マニュアルの効用> ~ <業務効率化への取り組み(19)視覚的なマニュアル> 参照。

 

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

 

※当記事は、2017年9月に観光経済新聞に掲載されたものです。

 

 

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