株式会社リョケン

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業務効率化への取り組み(16)マニュアル

マニュアル依存症

すでにお伝えしたように、マニュアルは業務を効率的かつ正しく行う上で非常に有意義なものと筆者は考える。マニュアル活用することは、過去の経験や知恵を反復利用することになるからである。また作るプロセスで、業務の合理的なあり方が見つめられ、整理されることになる。だから基本的に、業務はマニュアルに従って行われるのが正しい。それに従って行うことがムリ・ムダ・ムラを省き、ミスを防ぐ。
さて、それを前提としての話だが…マニュアルは「諸刃の剣」でもある。弊害の最たるものが「マニュアル依存症」だ。大きく二つの問題がある。

 

(ⅰ)マニュアル絶対主義

 

一から十まで、とにかく「マニュアル通り」にやろうとすることが、時として現場の状況に合わない場合もある。作られる時に全てのケースが想定できているわけではない。
ウソか本当かわからないが、ハンバーガー店で、1人で来てたくさんの注文をした客に、「店内でお召し上がりですか?」と尋ねたという笑い話もある。

またこんな事例がある―。

10室ほどある「同じタイプ」の客室に、定員分の布団を敷く場合の敷き方をマニュアルに定めた。ところが現場の担当者から、「その部屋(仮に301号室としよう)にはそのように敷けません」との声が出た。「そんなことはないだろう。同じタイプの部屋なんだから」と言ったが、果たして実際に301号室を見に行ってみると、同じ並びの他の客室とはそこだけ室内の造りが少しだけ違っていて、担当者が言う通り、敷けないことがわかったというものである。
このケースでは、担当者が不具合を言ってきてくれたからよかったが、もしマニュアルに書かれた通りに無理矢理やっていたらとんでもないクレームを招いていたかもしれない。

 

マニュアルをバイブルとしながらも、実情に即した判断ができるしなやかな構えを持つことが大切である。またマニュアルは決して「絶対」ではなく、「書き換えられるべきもの」という前提に立つ必要がある。

 

 

(ⅱ)考えない症候群

 

「全てやり方はマニュアルに書かれている」という認識から、それ以上、それ以外のことを考えようとしなくなってしまうケースがある。「マニュアルは完璧」という誤った幻想がこれをもたらす。良くできたマニュアルであればあるほど起こりがちな副作用だ。
スポット的にやってもらうアルバイトならそれでもよいかもしれないが、パートといえども継続的に勤めてもらう人がそうであっては人的資源の大いなる損失である。組織能力は半分休眠状態で、現場発想からの改善など望むべくもない。

 

マニュアルの運用にあたっては、同時に「そこに書かれていないこともある」「もっとよいやり方があるかもしれない」という意識を常に持つような姿勢を植え付けることが大切だと言える。

 

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

※当記事は、2017年5月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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