株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
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業務効率化への取り組み(9)人の移動

旅館経営タテ・ヨコ・ナナメ

ここまで、物の運搬について考えてきたが、旅館では「人の移動」も同様に捉えたい。館内を行ったり来たりする回数を少なくすることである。

人の移動を減らす

料理の数や内容に関する「当日の変更」を知らせるため、予約やフロントの人間がその都度調理場に走る姿を見かけるが、これなどはあまり価値のない「人の移動」と言える。事務所と厨房にそれなりの距離がある旅館では、その人的なロスはかなり大きい。

 

ところが、これが問題とされるケースは不思議に少ない。これには二つの要因がある。ひとつは、変更伝達がフロント事務所側の役目であり、調理場にとって何の不都合もないため、場場(=調理場)業務としては問題視されない、言い換えれば「業務」として認識すらされず、部門のはざまで水面下に潜っていること。もうひとつは、ほとんどの旅館で予約やフロントスタッフよりも調理場(料理長)の方が立場が上で、その要求には従わざるを得ない関係にあることである。

思い当たるフシがあれば、経営者や総支配人といった立場の人が検討・判断していただきたい。また料理長が業務効率化の重要性を「会社全体」の観点から理解する必要もある。情報の伝達は、今どき人がわざわざ動かなくとも方法はいくらでもある。それをあえて報告に来させなければ気が済まないという料理長も多いが、それは時代に逆行する考え方と言わざるを得ない。

料理は、接客係が調理場へ「取りに行く」方式よりも、別の人が「配達する」方式が合理的であることは前にもふれた。両者では総運搬回数(総移動回数)が全然違う。このことを少し詳しく見てみたい。

例えば係が5人、「部屋出し」で各2部屋持ち、調 例えば係が5人、「部屋出し」で各2部屋持ち、調理場でその時仕上げる料理が3品あるとすると、「取りに行く」方式では、厨房との往復は最大延べ30回となる。これに「次、○○をお願いします」といったリクエストを伝えに行ったりしていると、その2倍近くになっている可能性もある。

 

「配達」方式なら、提供タイミングの料理をまとめて運搬できるので、この何分の一かで済む。そして接客係はその移動がない分、お客さまと接する時間が長くとれる。2部屋持ちを3部屋・4部屋持ちとすることも可能になる。同じことは宴会場や小間食事会場でも言える。むろん「配達」方式には課題や不都合も生じてくる。

(ⅰ)次の料理のタイミングをどう計るか

各パントリーと厨房をつなぐ何らかの通信手段を持つ。館内電話・ファクス、パソコン、スマホやタブレット端末など考えられる。べつに大がかりなシステムなど組まなくとも可能だ。

 

(ⅱ)配送の係がそこに居ない場合、伝わらない

そういう場合のバックアップ体制をどうするか考える。2人体制なら、必ず1人がそこに残るようにするとか、それが無理なら調理スタッフが対応する手もある。

 

(ⅲ)係がパントリーに不在だと届けられた料理が放置され、冷める

「リクエストの○分後」という具合にリードタイムの原則ルールを決めておく。あるいはリクエストの時点で届ける予定の時間をあらかじめ伝えておく。

 

「現場を回す」という観点だけなら、各係が「取りに行く」方式がシンプルで分かりやすく、特に何も考える必要がない。対して「配達」方式は、うまく回すために少々複雑な「仕組み」や「ルール」が必要となり、面倒である。しかしその面倒こそが無駄な作業を減らし、生産性の向上を生み出すのだ。

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2017年1月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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