株式会社リョケン

Ryoken Notes

~リョケン研究員から~

顧客リストの整備を

リョケン研究員「フィールドノート」

旅館・ホテルの宿泊客には、他の商売と大きく異なる点がある。それは、世の中のほとんどの一般消費財・サービスでは購入客が「不特定多数」であるのに対し、宿泊客は「特定多数」である、ということだ。旅館・ホテルのお客様は「特定できる」のである。この特性は「顧客リスト」を整備・活用することによって生きてくる。ところが、「顧客リストは何件ぐらいありますか?」と尋ねると、それを明確に認識し、意識している旅館は意外に少ない。

いまや一定規模以上の旅館では、だいたいPMSというものが導入されている。これにはふつう、顧客情報のデータベースが組み込まれていて、「顧客管理機能」が備わっている。しかしそれが眠ったままになっていないだろうか。どうも、単にその日その日のオペレーション情報としてしか使われていないのが多くの旅館の現状のように思われる。

こんにち、ほとんどの旅館で、OTAがメインの集客チャネルとなっており、その比率は年々高まる一方である。だがOTAからの集客にいくらかかっているか?…
例えば宿泊料金が1人2万円×2名として4万円。昨今は手数料率が15%程度になっているので、1組当り6千円の費用がかかっていることになる。これを「変動費だからまぁいい」とあきらめてはいないだろうか。そうではなく、流通チャネル抜きで集客することを、もっと積極的に考えていただきたいと思う。そのための方策の大きなひとつが、PMSに蓄積された顧客情報を「見込み客リスト」として活用していくことである。

顧客へのダイレクトなアプローチ方法として考えられるのは、電子メールかDM(封書、はがき)であろう。電子メールは、実質的にタダで情報を届けることができる。一方DMは、デザイン・印刷費用がかかるうえ、このところの郵便料金の値上げでだいぶコストがかさむようになった。筆者は、それでもなお現物DMの効力を信じているが・・・まぁそれはどちらでもよい。要は、顧客に向けて直接メッセージを届けるという方策をもっと大事にしませんか、ということである。
仮に1通のDMに200円かかるとして、先ほどの6千円を充てるなら、30通送れることになる。「30通で1組以上の予約が取れるか?」という議論になるだろうが、これはやり方しだいだ。

「RFM分析」というものがある。これは顧客の購買行動を
・R;Recency(最終購入日)
・F;Frequency(購入頻度)
・M;Monetary(累積購入金額)
という3つの指標から評価して顧客をいくつかのグループに分類し、それぞれの状況に応じたマーケティング施策を講じていく考え方だ。これによって、顧客としての関係強化やつなぎとめを図ったり、あらためて購買を促したりする。

旅館の場合、一般に1回当りの購入金額(利用金額)に大差がないので、このうちMonetary(累積購入金額)はあまり考慮しなくてもよいかと思う。それで残る2つ、Recency(最終利用日)とFrequency(利用頻度)の関係によって分類した例が下図である。

リストの整理は、データベースの機能を使えば瞬時に振り分けできると思うが、ここでは原始的なやり方で…例では5×5=25のマスに仕切っているので、横にa~e、縦に1~5の記号をふり、マスごとに「a1」、「b1」…「e5」というふうに地番を割り当てる。そのうえで、顧客リストにそれぞれ該当する地番を書き込んで、その地番で並べ替えするとよい。

これはひとつの例なので、最終利用日や利用回数をどこで区切るか、またどのゾーンをどのような顧客として位置付けるかは、それぞれの状況に合わせてご判断いただきたい。
なおRFM分析は一般的なモノやサービスの販売を視野に置いたものであるが、旅館ではこの2要素以外に加え、「利用シーズン」や「来泊目的」といった要素でふるい分けるのも有効であろう。

この図において、グループごとに取るべき施策は分かれるが、具体的にどのグループに向けてどういう施策を行っていくべきかという話は、長くなるのでここでは省く。ただ少なくとも言えるのは、こうして分類することで、単なる横並びのリストからメリハリが見えてくるということだ。そして電子メールでもDMでも、お客様の状況に合わせて異なる内容のメッセージ、異なるプランの提案を届けることが考えられる。またコストのかかるDMでは、効果の見込めそうなグループ、あるいはもう一度掘り起こしたいグループだけを選び出して送る手もある。

顧客リストは、旅館・ホテルにとって「売上のタネ」ともなるべき貴重な財産である。それが顧みられることなく放置されているとしたら、じつにもったいない。もしいま、集客対策に思い悩んでいるなら、まずは「顧客リストの整備」を始めることを、ぜひおすすめしたい。

(佐野 洋一)

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