株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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業務効率化への取り組み(3)作業

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

前回は旅館の「労働の中身」の三つのレベルのうち、最小単位である「動作」について簡単にふれた。今回は、いくつかの動作のまとまり―「作業」レベルについて考える。作業とは、例えば「布団敷き」「テーブル拭き」「料理の運搬」といったものである。

作業

すでに述べたように、旅館の業務は多様なので「動作」レベルのことをあまり神経質に考えても得られるものは小さいと思われるが、「作業」レベルの合理化を考えることには大きな意味がある。「動作経済の原則」(前出)のうち「作業場所の配置についての原則」「設備・工具の設計についての原則」には注目に値するものがある。ただしここでは、それらの網羅的な紹介は避け、旅館の現場業務に照らして有意義と思われるものをいくつか取り上げて、ご検討に供したい。

 

・工具や材料はすべて定位置に置く

主に反復作業を意識した原則だが、そうでない場合も、そもそも「モノを探す」必要がないようにしておくことは効率に大いに関係する。ところが、これができていない現場は実に多い。「モノの置き場所が決められていない」や「どこに何があるかわからない」がいかに効率を阻害しているかは、直接目に見えないため理解されていない。例えばプレハブ冷蔵庫のどこに何が収まっているか、誰でもすぐにわかるようになっているだろうか?「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」や「3定(どこに・何を・どれだけ)」を愚直に守る利得、守らない損失は、長年にわたる製造業などの現場で実証済みなのである。

 

・工具や材料、機械は作業者のできるだけ近い位置に配置する
・動作順序を最適とするように配置する

作業者との関係において「何をどの位置に置いて行うか」ということである。料理の盛り付け、食器洗浄、会食場の膳組みといった毎日繰り返される単純反復作業は、極力この原則に照らして配置条件を吟味したい。担当者任せで、人や時によって違うやり方をしているようでは、効率ロスの積み重ねも大きいはずだ。

また毎日繰り返される作業でない場合も、その都度最適なモノの配置を考えて行うようにしたい。わかりやすい例を挙げよう。何種類かの書類を順番に重ねて封筒に入れ、テープで留めて段ボール箱に入れる、という作業を数人で行うという場面では、作業者がどこに立ち、モノをどう並べたら合理的だろうか?

 

・モノの「人力移動」は、上下移動を避けて水平移動にする

これは作業者の肉体的負担に大きく関わる。端的な解決例が、旅館でも多く用いられているエレベーターやリフト(無ければ大変)だが、より小さな局面で見直すべきことも多い。最悪なのは「一度床に置く」ということ。そのために肉体的負担だけでなく、余計な工程を増やしていることに気付かなくてはならない。
また、台からワゴンへの積み込み、パントリーから宴会場への段差を越える移動、食器の収納といった作業がある。これらにおける高低差の解消を考えよう。ただし完全に水平移動だけで構成するにはおそらく膨大な設備コストがかかるので、ここでは「なるべく」という範囲で捉えるのが妥当である。

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

※当記事は、2016年10月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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