株式会社リョケン

Ryoken Notes

~リョケン研究員から~

労働基準法の見直し

人材の採用と育成

2026年の労働基準法等の改正は、当初予定されていた「40年ぶりの抜本的見直し」の通常国会への法案提出が見送られ、当面は議論が継続される見通しです。労働基準法改正自体は見送られたものの、働き方改革の長時間労働是正や柔軟な働き方の方向性は変わらないため、法改正が確定してから慌てて対応するよりも、方向性の段階である程度の筋道をつくっておくことが肝心です。 施行を想定して検討が進められていた労働基準法改正では、労働時間・休日・休息の考え方を見直す制度変更が中心になると見込まれていました。中でも企業実務への影響が大きいと考えられていた主な8つのポイントは以下の通りです。

勤務インターバル制度の義務化

終業から次の始業までに一定の休息時間(例:11時間)を確保する勤務間インターバル制度を義務化する方向で検討が進められていました。例えば、接客スタッフが22:00に退勤した場合、翌日の始業は原則として9:00以降とする必要が生じる可能性があります。
休息と睡眠の確保が主眼であり、交代制や深夜・早朝対応のある部署では業務平準化によるシフトの見直しがカギになります。

 

連続勤務の上限規制

現状の休日規制の組み合わせでは長い連勤が理論上可能で、過労・メンタル不調への懸念が指摘されています。過重労働を防ぐ観点から、連続勤務日数に13日という上限が設けられる方向で検討されていました。これにより、週1回の法定休日の確保がより厳格に求められます。
したがって、「休日の明示と取得状況の管理」「代休・振替休日の運用ルール整備」が必須になります。

 

法定休日の明確化

現状では法定休日の特定が運用に委ねられ、休日割増の扱いが分かりにくくなる場面あるため、週1回以上の法定休日をあらかじめ特定し、明示する必要性の整理が進められていました。就業規則や雇用契約書への記載の明確化が実務上のポイントになるため、「就業規則の休日規定の見直し」「年間休日カレンダーの整備・共有」が求められます。

 

有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化

有給休暇の賃金計算方法の統一です。現状は年休取得時の賃金算定に複数の選択肢があり、会社ごとの定めで運用差が生じています。見直し方向は、算定方法の違いによる不合理な有利不利を縮小し、より分かりやすいルールへ統一するという発想です。
企業側は規程とシステムの見直しが必要になりますが、長期的にはトラブルの減少が期待されます。従業員は、安心して年休を取りやすくなる可能性があります。

 

「週44時間労働」の特例措置の廃止

一部業種の中小企業に認められている「週44時間労働」の特例措置について、見直しや段階的な廃止が検討されていました。あわせて、裁量労働制の運用・適用範囲の再確認も求められる可能性があります。
見直しは制度の公平性と整合性を回復する方向です。該当する事業者は、シフト管理や人件費の再試算が不可欠です。

 

副業・兼業の労働時間通算ルールの見直し

現状は原則として本業と副業の時間を通算して時間外を判定するため、副業人材を受け入れる企業にとって計算・管理のハードルが高いのが実情です。複数の事業主で働く場合の労働時間の通算方法が見直され、割増賃金の算定基準が変わる可能性があります。

 

「つながらない権利」の導入

見直しは業務時間外の連絡ルールをどこまで制度化するかという論点化にあります。テレワークやモバイル環境が一般化した今、就業時間外の心理的拘束をどう減らすかが議論の中心となります。勤務時間外や休日に業務連絡へ応答しない自由、いわゆる「つながらない権利(Right to Disconnect)」が、ガイドラインとして策定される予定です。

 

管理職ルール(管理監督者)の見直し

現状は要件が曖昧なまま運用され、「名ばかり管理職」問題が繰り返し指摘されてきました。見直しは要件の明確化や健康確保措置の整備が柱になる可能性があります。

 

2026年の施行を想定して検討されていた労働基準法改正は、単に一部の制度を変更するものではなく、企業の労務管理全体に連鎖的な影響を及ぼす可能性がある内容です。
人件費やシステム対応といったコスト面に加え、規程整備や従業員への説明など、継続的な運用負荷が発生することも考えられます。
いまの段階で、「勤怠管理や運用に無理がないか」「就業規則と実態にズレがないか」を確認しておくことが重要です。

(鈴木 正人)

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