株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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業務効率化への取り組み(21)標準作業時間

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

作業時間の計測・分析から「標準時間」(作業に要する標準的な時間)を割り出す技法の研究が、20世紀初めに米国で行われた。これを「時間研究」と言う。  

標準作業時間

標準時間を設定することには二つの目的がある。

 

ひとつは「計画」―作業に要する延べ労働時間を見極めて必要な人員配置を決めること、もうひとつは「評価」―望ましい作業能率が実現されているかどうかを検証することである。

サービス業においては前者が主な目的となる。

 

標準時間の割り出し技法は3通りほどあるが、このうち、旅館の現実に即しているのは「ストップウォッチ法」というものだろう。文字通り、ストップウォッチで時間を計って行う方法だ。元来ここでは、作業を「要素作業」という小さな単位(いわば動作)に分解して時間を計るが、旅館では流れ作業のような単純反復作業は少ないので、そこまで細かい分解をしてもあまり意味がない。客室清掃・セッティング、布団敷き、ベッドメイク、食器洗浄といったひとまとまりの括りで捉えれば十分と思う。そして客室なら部屋数、布団敷きなら布団の組数、食器洗浄なら食数を基準の単位とする。

 

いずれも、まず手慣れた人に作業をやってもらい、その所要時間を計測する。この時、ただ時間を計るだけでなく、2~3人が立ち合って、見習うべき作業手順ややり方があれば、ついでに書き留めておくとよい。これらは後でポイントとしてマニュアルに落とし込むことができる。

 

作業時間を計ることについて、前回の話で、「そんなことをしても結果的に大した違いはないのではないか」と思われがちだが、「そうではない」と申し上げた。

その理由は、時間を計ることが、同時に作業の「やり方」を見つめることになるからである。「理にかなったやり方」を考える良い機会となる。

 

作業時間は、作業の「やり方」とセットである。作業の標準化とは、作業者、用いる道具や機械、用いる材料、作業方法、作業環境といった要素を、あるべきかたちとして決めておき、それに従って作業を行うことである。しかし現場では、作業者の個人任せで、やり方は人によりマチマチといったケースが意外に多い。これが作業時間の個人差にもなっている。

さて、話を元に戻す。

このようにして計測した時間を「観測時間」と言う。しかしこれをそのまま「標準時間」とするのは無理がある。なぜなら、これはあくまでも熟練者が、何の障害もない状況の中で、脇目も振らずに集中して行った結果だからである。「普通の人が普通程度の状況のもとで普通に作業する」ことを想定して修正を加える必要がある。
まず「普通並みの人」は熟練者よりも作業スピードが遅いものと考えて、いくらか余計に時間がかかることを織り込む。これを「レイティング」と言う。

作業内容にもよるが、1~3割程度であろう。つまり1・1~1・3をかける。

これにさらに、さまざまな「余裕時間」というものを加味する。詳しいことは省くが、例えば掃除用具の準備や後片付け、朝礼や作業段取りの打ち合わせ時間、トイレタイム、小休止といったものである。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

 

※当記事は、2017年7月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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