旅館経営の知恵
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生産性向上の大局観(7)
旅館はもっと良くなるべきだ
企業活動を大づかみに捉えると、次のような流れで成り立っている。
事業構造から変える
まず事業に対して何らかの投資を行う
→その投資により一定の事業構造(もうかる仕組み)をつくり上げる
→その事業構造が収益性を生む
→その収益性が資本の蓄積を生み、財務体質を強化する
→蓄積された資本を再び事業に投資する…。
この関係を図式に表わすと、このようになる。
それぞれ前にあるものが次のものを規定する要因となって、全体として「環」のような関係になっている。
いわゆる「良い会社」は、どれが良いというわけではなく、どれもおおむね好ましい状況にあり、好循環で回っている。一方、「弱い会社」は、おしなべてどれも弱い。
四つの要素のうち、「収益性」「財務体質」「投資」の三つは、いずれも前の要素の状態によって規定されてくるものなので、一般にそこだけでどうにかすることは難しい。例外はある。例えば財務体質の弱い会社でも、しっかり練られた事業計画や経営手腕に対する評価をもとに、銀行から融資を引き出して投資を行うといったことは可能だ。しかしそれは一方で財務体質そのものをかなりアンバランスにし、危険な状態をくぐらなくてはならないことになる。
残る一つ「事業構造」は、他の三つと少し違う。投資によって規定される部分は確かに大きいが、それによって全て決まるわけではない。もし仮に投資で全て決まるなら、大きな資本力を持つ者が必ず有利な事業構造を獲得し、そのまま半永久的にこの循環が回っていくことになるが、そんなことはない。事業構造は、知恵と努力で変えていくことができるのだ。「生産性の向上」はまさにここに位置する。だから現在「弱い循環」の中にある会社は、大きな投資なしにできる生産性の向上を考え、事業構造の変革を図ることである。
念のためもう一度言うが、生産性の向上は業務効率の向上だけを意味するのではない。その着眼点については、前回の本欄で五つの検討方向を提言したので参照いただきたい。
もう一つ付け加えておく。低い収益性、弱い財務体質、投資もままならない状況にある会社が、事業構造を変えるために生かすべきものとして、三つのキーワードを挙げたい。それは「情報の活用」「人の結束」「スピード」である。これらにおいてほかを上回る強さを作り上げることが逆転を可能にする。そしてこれを実現するカギとなるのは、経営者の「先見力」と「リーダーシップ」である。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2018年7月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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