株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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生産性向上の大局観(5)

旅館はもっと良くなるべきだ

前回は、寿司屋の例を引き合いに「商売モデルと生産性」にいくつかの行き方があること、また新たな宿泊業態の抬頭(たいとう)に備えて、そのことを考えていく必要性について述べた。    

二つの視点で見直す

では具体的にいったいどんなことを検討していけばよいのか、ということを掘り下げて考えていきたい。視点は二つ。現在やっているサービスや業務について、「人がやるしかないか」と「その価値」である。

「人がやるしかないか」とは、サービスや業務を省いたり、人以外に置き換えることができないのかどうか? 「その価値」とは、人がやるからこその価値になるのかどうか? ということである。

二つの問いから、図のようなマトリックスができる。

 

(A)には、例えばコース料理の提供サービス、お客さま個々のご要望に合わせた対応といったものが入るだろう。人でなければできないし、人によるサービスが価値を生む。

(B)には客室セットやベッドメイクなどが入る。これらは人でなければできないが、そのまま人的サービスとして伝わる価値ではない。

(C)には料理などの運搬、保管、内部での情報伝達といったもの。そして

(D)にはお着きのおもてなし、部屋へのご案内、飲み物のオーダー受けや提供サービス、

BGM(生演奏もある)など、かなり多くのサービス、業務が入ることになる。

 

これらは人がやることで価値になるが、やらない、もしくは人によらない方法に置き換えることも可能だ。

 

実はこの二つの問いは、いずれも「どちらとも言えない」というものがある。例えば清掃など、これまでほとんど人が行ってきたが、技術進歩によって機械で置き換えることも可能になってきた。

また布団上げ、館内のご案内、会計精算といった業務は、そもそも価値があるとも言えるし、ないとも言える。省いた方が良い場合もある。さらに予約受け業務は、両方の意味でどちらとも言えない。

 

検討の方向は以下の通り
(A)いかにして価値を高めるか?、
(B)いかにして合理的にやるか、
(C)いかにしたら人がやらずに済むか?、
(D)人によって行うか? →人がやるならその価値をいかに高めるか?―。

 

生産性見直しのためには、ぜひともこの振り分けと検討を行ってみていただきたい。

 

 

 

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

※当記事は、2018年6月に観光経済新聞に掲載されたものです。

 

 

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