株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

旅館・ホテルにおける新型コロナ対策対応ガイドラインへのアドバイス

緊急対策

-営業再開に向けた運営のヒント-

5月14日に宿泊業3団体から、宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン(第1版)が提示されました。政府が提唱する「新しい生活様式」に照らした、宿泊施設向けの感染防止対策がまとめられています。

旅館・ホテルの現場で、このガイドラインの防止策をどのように展開していくとよいか、経営者や幹部社員の判断が必要となります。ここでは、休館日を設けながら営業を続けている施設や、すでに営業を再開した施設の実情を見ながら、ガイドラインに書かれていることを具体的な運営に落とし込むためのポイントをまとめました。

今までの経験では対処できないことが起きていますが、それ以上に、新しい運営に切り替えるチャンスであることを、社内で共有することを目指しましょう。そのためにも、計画と段取りを怠りなく進めることが大切です。

 

 

再開に向けておよび再開後の運営検討のあり方

1) 再開までのスケジュール(以下の内容と出勤者)を決める

2) ガイドラインをベースに、各場面の対応方針を決定する(経営者・幹部社員)

3) 対応策を現場運営レベルに具体化する

①道具を含めた準備手順
②ことばを含めた対応手順
③合理的な水準の人員配置

4) 上記3)の新しい運営方法について、実地トレーニングをする

5) 2-3日営業ごとに、振返りと改善策を話し合う時間を設定する

(運営と評価が安定するまで)

 

以下、具体的な感染防止対策の検討ポイントを、ガイドラインに沿って見ていきます。

 

 

1.従業員と宿泊客及び宿泊客同士の接触をできるだけ避け、対人距離を確保(できるだけ2メートルを目安に)する

従業員からの話しかけの距離感を理解する。新しい生活様式では「できれば2メートル、最低1メートル」は離れるように示されています。日ごろの接客の距離感は1メートルなので、それより離れることをまず体感してもらうこと。お互いに手を伸ばして触れない距離が1.2メートル。お客様への説明の距離・料理の説明はこの距離を意識しましょう。

 

一方で、フロントや売店などカウンター越しに対応する場所では、会話時に距離が取れないため「飛沫防止パーテーション」の設置を検討しましょう。

 

宿泊施設の雰囲気やグレード感を考えるならば、ビニールシートを吊るすよりもアクリル板に軍配が上がります。スタッフが手軽に設置取り外しができるタイプのアクリル板であれば、費用を抑えて準備ができます。

 

 

 

 

 

2.感染防止のための宿泊客の整理/チェックイン・アウト時に密にならないように対応

チェックインについては、予約時に到着時間の目安を知らせていただく方法をとることが、対応態勢を整える手立ての一助にはなります。しかしながら、お客様のご到着時間をコントロールすることは難しく、到着後に密にならない対応策、例えば、フロントカウンターに並んでいただかないように、到着順を把握してロビー席などに誘導することを玄関対応の仕事に加える、また、そのためにインカムを活用する、密になることが予測できるほどの予約がある日は、何組目からはお車の中で待っていただくなどの対策を館内施設に合わせて検討しておきます。

チェックアウトについては、出発時に合わせてフロントに立ち寄っていただくスタイルから、朝食の前後や、前日の夕食後にも承れることをアピールするかどうか、検討します。出勤者を限定しているので、対応できる人の出勤時間に合せるなどの検討が必要かもしれません。

 

 

3.ロビー、大浴場、食事処・レストラン等、宿泊客が同時に利用する場所での感染防止

大浴場については、繁忙日は時間制で利用人数を制限する方法も考えられます。日帰り入浴を取っている施設では、宿泊チェックインと日帰り入浴の会計が重ならないように、また入浴時間が重ならないように、しばらくは日帰りのご利用時間を縮小するなどの対応が求められるケースが見られます。

宿泊客の時間制を一部に採用するところもあります。お客様への配慮として、現在のご利用状況を大浴場入り口でお知らせする方法(パネルや質問に答える清掃兼務のスタッフ配置)も合わせて検討しましょう。

お食事処・レストランでは、夕食には入場時間を分けることが一般的です。料理提供の内容にもよりますが、区分ごとの組数は、その日のスタッフ人数までとすることで、入り口で並んでいただくことを避けられます。

また、区分の間隔は、30分よりも20分がよいようです。ご入店が少しずれてもまかなえる可能性と、一人当たりの処理能力が1.5倍に高まるためです。 また、いつもよりもスタート時間を20~30分早める設定ができないか考えてみます。

夕食でも、もともと入場時間を決めていない施設もありますし、朝食バイキングでは時間を決めていないことが一般的です。お客様の都合に合せて時間枠の中でお越しいただくことで、むしろ適宜分散すると考えることもできます。

ただし、ホールの席を間引いたり、隣席を空けてご利用いただくために、テーブルを回転して使う日もあるでしょう。その日だけは、前半・後半の入場時間を、お客さまに選択していただくことになります。

 

 

4.入口及び施設内の手指の消毒設備の設置

お客様が何かに触れる前と触れた後が、設置のポイントです。玄関(入り口)に設置するのは、フロントカウンターやロビーの椅子に触れる前だからですし、食事会場の入り口に設置するのは、当然食器や食品に触れる前だからです。

そしてぜひ設置したい場所が、売店・大浴場の入り口、加えて各階のエレベーターの前です。特にエレベーターのボタンを操作する前後で消毒していただくことは効果が期待できます。(スタッフの清掃頻度を上げても十分には対応しきれません。)

 

 

5.マスクの着用(従業員及び宿泊者・入館者に対する周知)

従業員のマスク着用を徹底することは、どの施設でも取り組んでいることと思います。施設によっては、色や柄を規定しているところもあります。接客を仕事にするスタッフには、再開前にこの規定について知らせておく必要があります。

お客さまへの周知については、声をかけることが難しいと思うことがあるでしょう。お客様ご自身のためと、みなさまお互いのご安心のために理解を求めたいのですが、チェックインの時にお持ちかどうかをお尋ねするのも一案です。買うことができずお持ちでない方には、さし上げるか安価で販売する方法も検討しておきます。

また、館内および客室のご利用案内シートの一部に、マスクや手指の消毒、また手洗いうがいについても記載しておくこともよいと思います。いくつか見かけるのはよくても、館内のいたるところに注意書きが目立つのは考えものです。周知するための異なる方法をさりげなく重ねたいものです。

 

◆ご案内文の例◆
「(旅館・ホテル名)は、政府発表の「新しい生活様式」を念頭に感染対策に努めております。
お客様みなさまのご理解に感謝し、以下の3点のご協力を重ねてお願いいたします。
【マスク】
館内のご移動(大浴場や食事会場への行き来など)には、マスクのご着用をお願いいたします。
【除菌スプレー】
食事会場・大浴場などに設置しております。ご利用のお客様は、入場時にお使いください。
また、特にエレベーターのボタン操作をされる方は、乗る前と降りた後に、
エレベーター前に用意しております《除菌スプレー》をお使いくださいませ。
【手洗いうがい】
日常生活でのご帰宅時と同じく、お客室に戻られたら、まず手洗いとうがいをおすすめいたします。

 

画像出典:リゾLAB「新型コロナウイルス対応POP」無料ダウンロード

 

 

6.施設及び客室の換気

パブリックスペースでは、気候のよい日はできるだけ大きく開口部を取りましょう。しかし、雨が吹き込む、風が強い、気温が高い/低いという日は、外に向けて開口部を大きく開けることができません。エアコンの効き目をよくするのと同じく、開口部に向けて小型の扇風機を回すことも換気を助けます。

また、客室の利用状況が許せば、客室は(できればフロア単位で)隔日に部屋割りをして、お客様が帰られた日は11:00-14:00ごろまで、窓を開放しておくだけにするなど手順の改善の余地があります。清掃は翌日行います。窓開放に合わせて、枕カバーやシーツは静かに外し、布団やベッドマットに風が当たるようにしておくこともできそうです。

 

 

7.施設内の定期的な消毒 ・宿泊客への定期的な手洗い・消毒の要請 ・従業員の毎日の体温測定、健康チェック

通常の清掃手順(マニュアル)とは別に、清掃担当者と話合いの上で、付加する手順を整理することから始めなくてはなりません。忘れがちなのが、社用スペースです。特に社用の出入り口、社用エレベーター、パントリー、従業員食堂、納品受付窓口、倉庫出入口などの清掃消毒手順を決めておきましょう。普段でも清掃を怠りがちな箇所は、これを機に5Sの見直しもできそうです。

お客様への手洗い等の要請については、前述のとおりです。

従業員の健康管理は、もとより会社の責任において実行されるべきことです。出勤時に自己申告するシートを使っている例もありますが、他者のチェックが必要です。出勤時に朝礼がある部署では一斉の確認がよいのですが、出勤がばらばらになる部署も多いでしょう。少なくとも記入を人目のつかないようなところにおかず、第3者の目視確認ができるよう場所に用意し、できればシートに第3者のチェック欄を設けておくことが望まれるのではないかと思います。

(株式会社リョケン研究員 大西ますみ)

 

※当記事は、旅館ビジネス向け情報サイト「リゾLAB」に掲載されたものです。

 

 

 

 

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