株式会社リョケン

「2024年の営業状況と財務・損益状況調査」報告

令和6年(2024)1月から12 月の間に決算期となった決算実績を対象に、旅館・ホテル様より営業・損益・財務の実績状況をご提供いただき、集計しました。調査旅館の平均客室数は59.4 室、今回調査の規模別の件数割合は、大規模旅館は、14.6%、中規模旅館は58.3%、小規模旅館は27.1%となっています。お忙しい中、ご協力いただきました各旅館の経営者の皆様、ならびにご担当者の皆様に厚く御礼申し上げます。
<調査期間:2025年2月1日~2025年2月28日、回答数:大規模施設7軒、中規模施設28軒、小規模施設13軒、計48軒>

1.売上効率

宿泊客1人当り・客室1室当りの売上高および売上効率

(1)宿泊客1人当りの売上高・基本宿泊料 等

宿泊客1人当りの売上高の平均は24,524 円、同基本宿泊料売上の平均は21,419 円でした。日本旅館協会(以下、日旅協)営業状況等統計調査の全国平均と比較すると、宿泊客1人当りの売上高で823 円上回り、同基本宿泊料売上で3,298 円上回っています。
宿泊客1人当りの売上高を規模別にみると、大規模旅館20,559 円、中規模旅館23,786 円、小規模旅館28,614 円と、規模により大きな差異がみられました。宿泊客1人当りの附帯売上は3,105 円で、うち料飲売上が1,427 円、売店売上が618 円という結果です。また、日帰客1人当りの売上高の平均は6,397 円でした。

(2)客室1室当りの年間売上高

客室1室当りの年間売上高は1,344 万円と、日旅協全国平均の1,136 万円を大きく上回っており、2,000 万円を超える旅館は全体の23.4%でした。また、客室1室当りの年間基本宿泊料売上は1,210 万円という結果でした。

(3)客室稼働率、定員稼働率

旅館営業の効率を表す客室稼働率(OCC)の平均は68.8%でした。日旅協データの全国平均の56.9%を11.9 ポイント上回っています。内訳をみると、80%以上が全体の25.0%、70%~80%が28.6%、60%~70%が17.9%、50%~60%が14.3%、50%未満が14.3%でした。客室稼働率を規模別にみると、大規模旅館60.0%、中規模旅館71.1%、小規模旅館68.1%という結果でした。定員稼働率の平均は41.0%です。日旅協データの全国平均の40.6%を0.4 ポイント上回っています。

(4)DOR、ADR、RevPAR

1室当り平均宿泊人員(DOR)の平均は2.47 人でした。規模別でみると、大規模旅館2.74 人、中規模旅館2.44 人、小規模旅館2.40 人となっています。ADR(1室1日当り平均販売価格)の平均は52,905 円でした。規模別では、大規模45,985 円、中規模51,856 円、小規模63,310 円となっています。ADRにOCCを掛けた数値のRevPAR(販売可能な客室1室1日当り平均基本宿泊料売上)は36,378 円でした。規模別でみると、大規模27,154 円、中規模36,875円、小規模45,096 円となっています。客室1室当りの売上高でも、小規模な施設ほど高い傾向が見られますが、ADR、RevPARではそれがより顕著に表れています。

グラフ(1)
グラフ(2)

売上単価・入込の前期実績との比較

今回ご回答いただいた旅館の、売上単価、入込人員の前年実績との比較は下記の通りとなっています。宿泊客1人当りの売上高は851 円増加、同基本宿泊料売上は1,145 円増加しています。また、宿泊人員の平均は前年実績の33,212 人から909 人増の34,121 人となっており、単価と客数ともに増加傾向となっています。日帰人員平均は329 人の増加となっています。

グラフ(3)

2.損益構造(収益性)

損益構成比

今回のアンケートでは、日旅協全国平均と比較して、原価率は低く抑えられていますが、人件費率、諸経費率は上回っています。回答施設における原価管理への努力や物価高騰の影響がうかがえます。

(1)売上原価率

平均売上原価率は19.4%で、日旅協全国平均23.9%を4.5 ポイント下回りました。売上原価率は小規模であるほど低く、これには基本宿泊単価の違いが大きく関わっているものと思われます。前年に続き低下傾向にあり、回答施設における宿泊単価の向上とコスト管理に加えて、客数増加により売上が拡大傾向にあり、相対的に原価率が抑えられたことも要因と考えられます。

(2)人件費率

売上に対する人件費の割合は32.7%(うち外注費は3.2%)で、日旅協全国平均の29.7%を3.0 ポイント上回りました。人件費率には、規模による明らかな違いは見られません。従業員が効率的に働いているかをみる労働分配率(人件費÷売上総利益)は40.6%で、適正範囲といわれる40%を若干超えているという結果です。

(3)諸経費率 ※主な経費は下段にて分析

売上に対する諸経費の割合は38.0%で、日旅協全国平均33.5%を上回っています。うち営業費は12.7%、業務費は17.0%、管理費は8.3%となっており、いずれも日旅協指標を上回る結果となっています。諸経費率にも、規模による明らかな違いは見られません。

(4)償却前営業利益率 ※GOP:Gross Operating Profit=運営総利益

償却前営業利益(営業利益+減価償却費)の売上高に対する比率は、日旅協平均の13.0%に対し、本調査では平均で9.9%という結果となりました。20%以上確保している旅館が全体の6.7%、15~19%台が10.0%、10~14%台が30.0%、5~9%台が40.0%、5%未満が13.3%でした。

(5)償却前経常利益率

2024 年までは多くの施設で補助金等の支援策が活用され、前年からは低下したものの、営業外収益が売上比6.2%と比較的高い水準にあります。これにより営業利益率が2.8%であるのに対し、経常利益率は6.7%、償却前経常利益率では13.8%となりました。

グラフ(4)
グラフ(5)

主な経費の対売上高比率・客1 人当りの経費効率

(1)主な経費の対売上高比率

主な経費の対売上高比率は、送客手数料率9.2%、広告宣伝費率1.6%、エネルギー費(水道光熱費+燃料費)率7.7%、修繕費率2.4%という結果で、送客手数料が前年から上昇し、エネルギー費の比率が低下しています。

グラフ(6)
(2)客1人当りの経費効率

客1人当りの主要経費の平均額は、送客手数料2,254 円、広告宣伝費466円、エネルギー費(水道光熱費+燃料費)1,887 円、修繕費736 円でした。前年調査から送客手数料が大きく上昇し、修繕費も上昇しています。エネルギー費は、前年を若干下回ったものの、高い水準で推移しています。

グラフ(7)

3.財務構造

安全性・活動性・借入金適正度について指標値を算出しました。ここではアンケート回答旅館の平均値から、財務構造の全般的な傾向と課題を見ていきます。(貸借対照表項目に記載いただいた施設のみ取りまとめていますので、「1.売上効率」「2.損益構造」と集計対象旅館が異なります。)

安 全 性

グラフ(8)

a. 短期支払能力をみる流動比率の平均は178.6%で、望ましい数値としている120%を上回っていますが、本調査での集計結果としては下降傾向にあります。支援施策を活用した設備投資が実行されたことも要因のひとつとみられます。回答施設個々の数値をみると、流動比率150%以上が全体の64.7%を占めており、100%未満は17.6%にとどまりました。
b.長期安全性をみる固定長期適合率の平均は89.6%と、流動比率同様に望ましい数値としている95%以下となっていますが、前年からは上昇しており、設備投資が活発に行われたことも影響しているものと考えられます。
c.自己資本(資本金・法定準備金・剰余金の計)が総資本(=総資産)に対して占める割合を示す自己資本比率は17.1%と高い結果となりました

活動性

グラフ(9)

a.投下した総資本に対してどれだけの売上高を上げられたかをみる、総資本対売上高回転率の平均は0.56 回転でした。
b.総資本に対してどれだけの経常利益を確保できたかを示す、総資本対経常利益率(企業の業績評価の重要ポイントともいわれます。)は、前年からさらに上昇し3.73%という結果でした。
利益確保に取り組まれる一方で、活発な設備投資による総資本の増加といった面も反映しているものと考えられます。

借入金適正度

グラフ(10)

a.借入金(長期借入金+短期借入金)に対して、売上高がどの程度あるかをみる借入金対売上高回転率は1.34 回転と1回転を上回りました。
b.借入金対償却前営業利益率は、利息支払・元金返済の原資となるGOP(償却前営業利益)が、借入金に対してどの程度あるかを示す数値です。今回調査では13.3%でした。

a.借入金(長期借入金+短期借入金)に対して、売上高がどの程度あるかをみる借入金対売上高回転率は1.34 回転と1回転を上回りました。
b.借入金対償却前営業利益率は、利息支払・元金返済の原資となるGOP(償却前営業利益)が、借入金に対してどの程度あるかを示す数値です。今回調査では13.3%でした。

グラフ(11)

本調査にご協力いただきました皆様には、心からの御礼を申し上げます。弊社では今後も各種アンケートを実施してまいります。今後ともアンケートへのご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。