株式会社リョケン

第94回 短観アンケート「2024年 秋の実績 忘新年会の状況 冬の見込み」

リョケンでは、全国の旅館・ホテル様を対象に、四半期ごとの実績や見込みをベースにした業界動向調査 「リョケン 短観アンケート」 を、継続的に行っております。このほど、第94回アンケート (11月実施分) の集計がまとまりましたので、以下の通りご報告させていただきます。

ご多忙な中でご協力いただきました皆様には、心より御礼を申し上げます。
<調査期間:2024年11月2日~2024年11月16日、送付数:(FAX)789軒、回答数:40軒、回答率:5.0%、(eメール)362軒、回答数:52軒、回答率:14.4%>

秋の実績 - 単価向上は続くも、客数回復には落ち着きも

秋(9月~11月)の実績についての回答をまとめました。今回調査結果とともに前回調査の「見込み」と前年調査の「実績」とを比較しています。

 

●基本宿泊単価・総宿泊単価
基本宿泊単価・総宿泊単価ともに、「上昇傾向」との回答が約7割という結果でした。「下降傾向」との回答はごくわずかで、引き続き高単価化の取り組みが進められています。しかし、「リベンジ消費が一巡した」とのコメントもあり、国内の旅行需要には注意が必要です。

 

●客数傾向
客数傾向は、前年と比べ「減少傾向」との回答がやや下回りましたが、一方で「増加傾向」の回答も下回り、客数傾向は落ち着きがみられるようです。
また、「原価高騰による値上げに対して客数が伸びず、単価の値下げをせざるを得ない」とのコメントもあり、価格に対する宿泊客とのギャップもみられるようです。

 

●規模別客数傾向
規模別の客数傾向(当館)では、大規模で「増加傾向」「横ばい傾向」が合わせて9割、中規模では8割を超えましたが、小規模では「減少傾向」が約3割と高い数字でした。

 

●コメントから見える全体的な傾向
今回調査では、コロナ禍が明けたリベンジ消費の落ち着きが見られたため、客数傾向には落ち着きもみられるようです。
また、物価の高騰が引き続き見られ、旅館への影響も多くあるなかで、高単価化を図るものの、そこでの集客の難しさもあるようです。

忘・新年会の状況 - コロナ前の水準には戻らず

忘・新年会の状況についての回答を表にまとめました。前年調査の見通しと比較しました。

 

●客単価
単価の維持・向上の回答は8割以上あったものの、前年と比べ鈍化していることがうかがえます。
関東、中国地方では「上昇傾向」の回答も多くみられた一方で、甲信越、北陸地方では20%以下の結果に留まりました。

●客数傾向
「増加傾向」が6.7ポイント減少し、「減少傾向」は3.4ポイント増加しています。コロナ禍からの回復が鈍化する中、物価高や消費抑制の影響もあり、宴会需要の復活には至っていないようです。
前年と比べ「横ばい傾向」との回答が最も多く、「増加傾向」を見込めているのは2割にとどまりました。

 

●コメントから見える全体的な傾向
職場関係の忘年会や旅行の減少、及び団体宴会の在り方が変わってきている、とのコメントがみられました。忘新年会の予約は多くないとのコメントも多いなか、一方で、予約のタイミングが団体・個人ともに早いとのコメントもありました。忘新年会の誘客に地域でも力を入れているとのコメントもありました。
一方で、宴会の見込みが薄いため、個人やインバウンド、小グループの受注に努めているとのコメントもありました。宴会受け入れに対する方針を決める必要が、コロナ禍を終えいっそう強まっています。

冬の見込み - 客数に慎重な見通し

冬(12月~2月)の見込みについての回答を表にまとめました。

 

●基本宿泊単価・総宿泊単価
基本宿泊単価、総宿泊単価とも「上昇傾向」と回答した施設は約5割を超え、「横ばい傾向」も含めると9割以上となりました。引き続き単価の向上には取り組んでいる施設が多いようです。

 

●客数傾向
客数傾向(当館)については「横ばい傾向」が48.9%と最も多くなっています。「増加傾向」との回答は中国地方が最も高く。50.0%という結果でした。引き続き、人材確保に悩まされ100%の稼動ができないとのコメントもあるものの、オンシーズンでの客数確保を意識している施設もみられました。

 

●規模別客数傾向
規模別の客数傾向(当館)では、「増加傾向」との回答が大規模で16.7%、小規模で16.7%であったのに対し、中規模では36.4%と、やや高い結果となりました。

 

●コメントから見える全体的な傾向
前年に引き続き、団体需要の戻りの遅さ、物価高騰などの不安要素が重なり、慎重な見通しとなっています。
「宿泊については回復傾向が続いており、コロナ前のレベルに戻りつつある」「インバウンドが増え、全体的には、前年を超えている傾向」とのコメントもありました。
しかし今回調査では、宴会の誘客に苦慮しており、期待できないというコメントが目立つ結果となりました。その他「宴会の需要は戻りつつあるが、旅館が対応しない、できない傾向にある」「宿泊は受け入れても日帰り団体は厳しい」とのコメントもあり、宴会需要の回復と宴会対応可能な人材確保には、依然厳しい見通しがうかがえます。

今回調査では、いずれの項目においても、人手不足への苦慮がコメントからうかがわれました。宿泊業界全体で人手不足が深刻化している中、旅行需要の回復に伴い新施設の開業が相次いでおり、人材の取り合いの様相を呈しているようです。
そのような折、近隣の高校・大学で旅館・ホテルの仕事説明会を設ける、従業員寮を改装するなどにより、採用対策、待遇改善を図り、人手不足解消に取り組まれている施設もあるようです。

施設からのコメント(抜粋)

今回も多くのコメントをいただきました。忘・新年会の動きがコロナ禍前に戻らないとのコメントが目立ちました。

 

【いただいたコメント】

●昨年は全国旅行支援実施、今年は裏年の為、11~12月がエリアとして昨年を下回りつつある。(北海道・大規模)
●夏が猛暑のせいかとても悪かったが、秋以降はその分予約が正常化しているように感じられる。冬はまだわからない。(山形県・小規模)
●団体型の忘・新年会が少なくなり、ホテル利用が減少している。(山形県・中規模)
●先行受注は動きが悪くないが、個人が多いので取り組みを緩めると集客ができない可能性はある。(栃木県・大規模)
●宿泊については回復傾向が続いており、単価アップ効果もありコロナ前のレベルに戻りつつある。宴会部門売上はコロナ前比30%前後にとどまり、完全な回復は見込めない。(栃木県・小規模)
●忘・新年会の予約状況は減少傾向で、12月前半金・土曜のみ入れ込み予想。(群馬県・大規模)
●基本的には単価を上げているので売上は前年を上回る。だが客数は減少傾向。少し頭打ち気味になってきている。(山梨県・中規模)
●春以降、地域全体の宿泊を伴う来訪は減少。秋以降、団体宿泊客が増えており、忘年会も宿泊は昨年並み、日帰りは増加傾向にある。(静岡県・中規模)
●全体的に予約が早い。(兵庫県・中規模)
●客室係の不足により、100%の稼動を確保できない。ランク変動によって料金の強弱をつけて、収益の確保に結び付ける以外に現状では厳しい。(兵庫県・中規模)
●秋の宿泊は昨年に比べ、団体お遍路のお客様は増加したが、全体では微減。忘・新年会や冬の宿泊は、例年11月後半ごろより予約が入ってくるため、現状は低調推移ながら、前年並みの推移の見込。(高知県・中規模)

宴会場の縮小や、宴会の受け入れを辞める施設もみられ、新しい時代でどうしていくのか岐路に立っていることがうかがえます。様々な難しい課題に取り組まれている折、本調査にご協力いただきました皆様には、心から御礼を申し上げます。

 

弊社では今後も各種アンケートを実施してまいります。今後ともアンケートへのご協力を 賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。