株式会社リョケン

「採用・育成・定着対策 状況調査」集計結果(第51回3分間アンケート)

新型コロナウイルス感染症の観光市場への影響が概ね収束し、宿泊・訪日需要はコロナ前を凌駕しつつあります。他方、3年以上続いたコロナ禍での営業規制や休業等で、スタッフの減員や他業種への流出もあり、宿泊現場では深刻な人手不足状態が顕在化しています。
ほとんどの宿泊施設で働き手を求める中、人材獲得競争は激化する一方で、人材確保に大変ご苦労されていることと拝察いたします。
今回の調査では、旅館・ホテルでの雇用と社員教育の現状、定着に向けた取り組み、そして外国人雇用の状況についてもお伺いしています。以下に調査結果の詳細をご報告いたします。現状把握と今後の活動の一助となれば幸いです。

調査概要

Ⅰ.アンケート回答数
▶ご回答旅館・ホテル軒数:48軒
●アンケートはメール及びFAX送付にて依頼
●調査期間:令和5年12月20日~令和6年1月9日

Ⅱ.回答旅館・ホテルの収容規模
▶客室数平均:73.6室
●小規模(~30室)      9軒/平均21.9室
●中規模(31~99室)25軒/平均55.6室
●大規模(100室~)  14軒/平均138.9室

1.長期雇用人材の採用実績

Ⅰ.採用実績のあった旅館・ホテルの割合

2022年と2023年での採用の実績ありと回答した施設の割合を、前回調査(2018年・2019年)とともに比較した。
新卒正社員を採用した施設は概ねコロナ前の水準に戻っている。正社員中途を採用した施設は減少を続けていたが、2023年には急増している。パートタイマーの採用施設についても2023年に急増している。

長期雇用人材採用施設の割合

Ⅱ.規模別 採用実績のあった旅館・ホテルの割合

2022年長期雇用人材採用施設の割合 2023年長期雇用人材採用施設の割合

2022年と2023年において採用のあった施設の割合には、以下のような傾向がみられた。
●小規模旅館:新卒の正社員採用を行う施設の割合が5割弱まで上昇した。正社員中途採用・パート採用を行う施設の割合も大幅に上昇している。
●中規模旅館:新卒・中途の両方で人材採用を行う施設が多く、約7割の実施率となった。
●大規模旅館:すべての施設で新卒採用を行っていると回答、中途やパートの採用も多くの施設で取り組まれている。

Ⅲ.年間採用人数

前回調査と合わせ、採用人数を年別に比較した。(採用なしの施設を含まない)
いずれの雇用形態も、コロナ前より採用人数は増加傾向にある。パートタイマーの採用人数が特に増加傾向にある。

長期雇用人材年間採用人数

Ⅳ.規模別 年間採用人数

2022年長期雇用人材採用人数 2023年長期雇用人材採用人数

施設規模別に、2022年と2023年の年間採用人数を比較すると以下のような傾向がみられた。

●小規模旅館:正社員新卒・中途採用の人数は横ばい。パート採用の人数は減少している。
●中規模旅館:正社員新卒・中途採用の人数は横ばい。パート採用の人数は増加がみられる。
●大規模旅館:正社員新卒・パート採用の人数は増加がみられる。正社員中途採用は横ばい。

2.短期雇用人材の採用実績

Ⅰ.採用実績のあった旅館・ホテルの割合

2022年と2023年における短期雇用人材の採用有無を比較した。
派遣社員の雇用があった施設はやや減少している。アルバイトは横ばい傾向であったのに対し、単発アルバイトについては急増している。
単発アルバイトの採用施設が急増した要因としては、「Timee」など、スキマバイトのサービスが急速に普及し、宿泊業においても導入をする施設が増加したためと考えられる。

短期雇用人材採用施設の割合

Ⅱ.採用実績のあった旅館・ホテルの割合

2022年短期雇用人材採用施設の割合 2023年短期雇用人材採用施設の割合

施設規模別に、採用のあった施設の割合を年別比較すると以下のような傾向がみられた。

●小規模旅館:派遣社員はやや減少、アルバイトは横ばい傾向。単発アルバイトが大幅に上昇。
●中規模旅館:派遣社員はやや減少、アルバイトは横ばい傾向。単発アルバイトが大幅に上昇。
●大規模旅館:派遣社員・アルバイトは横ばい傾向。単発アルバイトが大幅に上昇。

派遣社員で減少傾向がみられる一方、単発アルバイトの活用が規模を問わず進んでいることが窺える。

3. 取り組んでいる採用活動

Ⅰ.媒体ごとの利用状況 (複数回答)

現在取り組んでいる採用活動について、利用している媒体を伺った。
最も利用されているのは「求人媒体(web)」で、約8割の施設で利用されている。合同企業説明会も、半数以上の施設が参画している。

なお、施設規模別にみると、利用されている媒体は多いものから順に、
●小規模旅館:「求人媒体(web)」「人材紹介・スカウト」「求人媒体(新聞・雑誌)」
●中規模旅館:「求人媒体(web)」「企業説明会(合同)」「自社HPの活用」
●大規模旅館:「求人媒体(web)」「企業説明会(合同)」「自社HPの活用」
となった。

採用活動 媒体ごとの利用状況

Ⅱ.実施した採用活動の効果について

採用活動で利用した媒体の効果について伺った。「効果が大きい」の割合については、「求人媒体(web)」「企業説明会(合同)」が最も高い結果となった。他方、「効果が大きい」との回答が50%を超える媒体はないことから、複数の媒体を併用する必要性が窺える。
また、コメントをいただいた、効果のあった採用活動の具体的な内容は以下のとおり。

●おてつたび
●ハローワーク
●外国人紹介業者の利用
●Timee
●知り合いからの紹介
●日本語学校への働きかけ
●indeed
●採用実績のある高校への訪問

実施した採用活動の効果

4. 教育および育成計画について

人材育成の実施状況と今後の意向 (複数回答)

採り入れている社内研修や育成制度について、実施の状況ならびに今後の実施意向のあるものを伺った。
「業務マニュアル」「エルダー(先輩社員)によるOJT」は約半数の施設が実施している。「育成計画を立てる」「スキルマップの活用」は実施率は低いものの、今後の実施意向は高い結果となった。
人材育成において、選択肢に挙げた項目はいずれも効果的なものではあるが、大規模施設では複数項目を実施している施設が多く見受けられた一方で、小~中規模施設では複数項目を実施している施設は少なく、限られた人的資源で人材育成を充実化させることの難しさが窺われる。 また、その他実施しているものとして「観光施設や同業他社の見学」「外部機関の研修への参加」といった取り組みもコメントからいただいた。

人材育成の実施状況と今後の意向

5. 従業員定着のための対策

従業員定着のために重視している対策 (複数回答)

従業員の定着対策として重視していることで、最も多かったのは「職場の雰囲気・コミュニケーション改善」。これに次いで、「給与・待遇」「シフト改善」「休日数・付与方法」といった項目も半数以上で挙げられており、労働条件面、メンタルヘルス面の双方で努力されていることがうかがわれた。
一方、指導する立場の先輩社員への指導や支援という面では、重視しているとの回答は多くなかったが、継続的な社員のレベルアップや関係づくりを考えるうえで、大切になっていくものと考えられる。

従業員定着のために重視している対策

また、従業員定着のための具体的な取り組みとして、以下のコメントをいただいた。

●年間65日の休館日を設定する
●休館日を設定し、公休取得を徹底
●自由に希望休をとれるようシフト管理
●ES向上、ハラスメントがない環境作り
●ホテル大浴場の利用
●奨学金返済への手当
●従業員寮の改修
●社内トレーナーによる毎月のフォロー研修

6. 外国人従業員の雇用の状況

人材不足が続く中で、インバウンド対応の面でも役割が期待できる外国人スタッフの雇用が増えている。
今回調査では、「雇用実績あり」との回答は、前回調査(2019年)から3.3ポイント上昇して72.9%、「今後雇用したい」との意向を含めると89.6%にのぼった。

外国人従業員の雇用の状況

以上

本調査にご協力いただきました皆様には、心からの御礼を申し上げます。弊社では今後も各種アンケートを実施してまいります。今後ともアンケートへのご協力を 賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

過去のアンケート調査結果は、こちらからご覧いただけます。