株式会社リョケン

和泉屋

料理献立を変更し、料理提供運営を改善・CS&ESの向上を図る

和泉屋(新潟県長岡市・よもぎひら温泉)

旅館にとって「料理」商品は“お腹を満たす”“食べる”だけにとどまらず、お客様にとっては非日常を楽しむ良い空間と時間であり、多くの人と労力をかけている大切な商品である。
今回「和泉屋」では、お客様も従業員も幸せになるための改革を最大のテーマに、料理改革を行った。

INDEX

忙しいだけの「料理」商品は、従業員の心と身体を疲労させ、お客様にも喜ばれない。

お客様にとって、旅館でのお食事の時間は旅のハイライトともいえる貴重なものです。そして、私たち旅館にとっても、「料理」に関わるスタッフ数は一番多く配置されており、日常とは違うお客様の大切な食事時間を楽しく、そして思い出として持ち帰っていただけるように、商品づくりを行っていると思います。しかし、料理に関して多くの人と時間を費やしているにもかかわらず、お客様にご満足をいただけていないとすれば、それはとても残念なことです。ゆえに、「料理」は常に、改革と挑戦を続けていくことが必要な商品といえるでしょう。

新潟県長岡市の「よもぎひら温泉 和泉屋」では、「料理」について抱えていた様々な問題を料理献立と料理提供運営を変えることで、解決しました。

ここでは和泉屋様の取り組みとリョケンのサポート内容についてご紹介いたします。
まず、現地を訪れて、調理・接客の現場から聞かれた言葉は、「人が足りない」の一言でした。「人が足りない」という一言の背景には、様々な問題がありました。

●目の前の業務をこなすだけで精一杯、おもてなしをしたくても、これ以上はできない。
→ 精神的にも肉体的にも、疲労困憊。仕事が楽しくないと思えてくる。
●「料理」の現場はこんなに忙しいのに、あそこの部署は楽をしている。
→ 社員間・部署間の軋轢を生み、敵対視してしまう。
●なぜうちの部署だけがヘルプに行くのか。あの部署はヘルプをしないのに…。
→ 従業員間の信頼感はなくなり、コミュニケーションが欠如していく。

このような状況にあると、お客様に目が向かず(お客様不在)、「遅い・忘れた・間違えた」というクレーム要素が生まれ、お客様の評価は下がることになってしまいます。さらにこれらの問題を放置しておくと、従業員のモチベーションは低下し、仕事へのやりがいもみつけられず、勤務意欲も減退し、退職者が増加してしまいます。そこで、「和泉屋」として4つの課題を掲げ、役員・従業員全員で取り組むことにしました。そして課題として「料理」商品の改革を進め、従業員にとっても良い環境を構築しながら、お客様にとって良い料理と環境を構築し、お客様の満足を高める取り組みに着手しました。

◆和泉屋が掲げた4つの課題

1.生産性の向上
2.リーダー育成
3.顧客満足度の向上
4.販売力の強化

両極にあると思える「生産性の向上」と「商品力UP」(料理)を同時に行い、ムリ・ムダ・ムラを削減することで、職場内のコミュニケーション力を向上させ、お客様へ目を向けられる余裕をつくり、お客様の満足を勝ち取り、再来を促す、好循環のサイクルに移行することをテーマに取り組みを開始しました。

現在の「料理」運営の問題を探ると、実に多くの問題点が山積みであった。

◆職場の現状把握

現在の「料理」を取り巻く状況を調査し、ヒアリングを行いました。

1.献立は、宴会料理・レストラン料理・料亭料理すべて同一である。
2.料理提供の方法も、どの会場でも同じやり方で行う。
3.献立の多くを先セットで膳(テーブル)に用意し、後出し料理のみ提供する。
4.後出しの「温物」「止椀」のみ、接客が調理にオーダーする。
5.後出し回数が少ないので、下膳は食事後に一斉に行う。

なぜ、このやり方になったのかといえば、「効率的な運営を行うため」の一点です。旅館全体で、「料理ランクが少なくて済むので効率的」「予め料理セットができるので効率的」「料理提供の運営が同じなので異例がなく効率的」「終了後に一斉に片付けられて効率的」と考えていました。しかし、その実情を探ると、「効率的」であるように思えて、実に多くの問題を抱えていました。まずは、「お客様不在」に陥っていたことです。旅館が「効率的」と思って行っていましたが、料理をいただくお客様からすると、不満だらけの料理だったのです。そこには、実際にお客様となってお料理をいただくと明確に感じる「不」が存在していました。

◆お客様の現状把握

1.席に座るとほとんどの料理が並んでいて残念。(献立最後の料理も出ている)
2.食べ始めると、ゴールまでずっと食べ続けるように忙しく、苦しい料理展開。→ 食事を始めたところで、焜炉(ご飯・台の物)に火が点けられ、追って造里(後出し)が提供される。台の物が出来上がる頃に温かい蒸し物(後出し)が提供され、温物は同時スタートになる。食べたり、焼いたり、とにかく最後まで息をつく暇がない状況。
3.先セット料理は冷めていて、料理によっては乾いてしまっている。
4.温かい料理は一斉になり、すぐ食べられない状況で、結局冷めてしまう。

旅館側の「効率的運営」を求めているだけの献立と料理で、お客様にとっては「残念」な料理になっていました。

さらに、この料理運営の流れには、別の大きな問題もありました。「和泉屋」では食事場所が1階・2階・3階に分かれています。2階に本厨房があり、事前セットの料理は17時にはすべて上がっている状況で、調理は食事がスタートしてから接客のコールで後出し料理を作ることになっています。1階・3階担当の接客は、後出し料理のコールを電話で行います。基本的にランナーはおらず、出来上がった料理は3階ならリフトで料理を搬送し、1階は電話の出来上がりコールで2階本厨房にとりに行く流れでした。しかし、調理・接客それぞれにヒアリングすると、様々な問題がありました。

◆調理場

お客様の夕食がスタートしてほどなく、1階・2階・3階の各会場から後出し料理のコールが重なってくることで、料理を作るので精一杯になり、焦りからイライラが募ります。接客からの電話のコールを取ることができなくなり、料理配送もままならず、温かい料理が置かれたままになり、早く接客は取りに来いよという気持ちになります。さらに、調理部門の勤務時間・拘束時間が長く、今後の働き手を求めるにも、この働き方では来てもらえる人はいないであろうという心配もありました。

◆接客

接客は後出し料理のコールをかけますが、料理がなかなか上がってきません。また、そのうち調理は電話に出てくれなくなります。そこで本厨房に行き「料理はまだでしょうか」と調理に伝えます。しかし、調理から「今やってるだろ!」と怒鳴られてしまいます。調理場で待っている間、食事会場には接客が不在の状況が続きます。また、接客は食事前にもストレスがたまることが起きています。お客様の食事スタート前に、お客様のテーブルにほとんどの料理を並べておかなければなりません。しかし、その作業の時はちょうどチェックインの時間。当時は担当制で行っていたため、担当のお客様が到着するたびに、客室へのご案内と客室チェックインに出なければなりません。料理点けと客室案内が重なり、思うように仕事が進まないジレンマを抱えていました。

1階レストランでは、料理進行管理者が設定され、35卓の席を一人で管理し、後出しコールから料理提供指示を行っており、それ以外の接客は指示を待つのみで、料理進行管理者だけが焦りでイライラしています。テーブルに料理を運ぶだけの業務のため、お客様に目は向かず、飲み物のおすすめや追加などにも神経が届きません。

このように、すべての従業員が「忙しく一生懸命に仕事をしている」のです。しかし、従業員すべてがストレスを抱えており、お客様も料理について評価をしていただけません。こんな残念なことは、あってはらならないと強く感じました。

従業員が無理せずに、気持ちの余裕をもって行えるお料理を提案する

この解決にむけて、「宴会料理」(出し切り料理)ではない、「個人料理」を構築することを提案いたしました。まずは、個人客が一番お食事をされる会場の「レストラン」献立を基本にして変更を考えました。料理献立においては、調理長に以下の10項目を提案しています。

この提案をふまえ、調理長と検討して、完成した献立が以下の料理です。

先セットのお料理「前菜」は夕食開始10~15分前にテーブルセット、そのあとは一品出しで行いますが、後出し回数は以前と同じです。「椀物」には徹底してこだわり、調理長の味をお客様に感じてもらいます。そのほかのお料理は、既存の冷蔵庫・温蔵庫を上手に活用して、タイミング重視の料理提供に変えます。接客はエリア担当制に変え、後出し料理のタイミングはお客様のお食事の進行を見ながら、接客それぞれのタイミングで行います。飲料のオーダーにも気を配ることができる間をつくり、ノンアルコールやお酒の割モノはディスペンサー機器を導入し、ストレスなく簡単に誰もが同じ味で作ることができるように変えました。

変更後の夏料理は、以下のような料理になりました。

【前 菜】:長手箱に季節の彩りと酒どころ長岡にあう料理を盛込で提供
【椀 物】:夏らしい調理長渾身の椀を熱くお客様に提供
【造 里】:生本鮪や平政、のど黒など、良いお魚を提供
【預け鉢】:食事の間合いをつなぐ地元食材の盛込を提供
【焼き物】:地元の雪室熟成豚の桑焼きと丸茄子かぐら田楽、活鮎姿焼きも提供
【食 事】:米どころを炊き上げて提供、止椀は越後田舎味噌、お供のじゃこ
【水菓子】:白桃紅茶ゼリー

さらに、献立にはない1品をワゴンサービスで提供するようにしました。タイミングにはこだわらず、お食事中のお客様のお席を回ります。この時は、越後の「冷やしのっぺ」で、冬瓜に出汁を入れ、テーブル前で完成させます。

新しい献立とお料理提供で、調理・接客ともに時間的な余裕が生まれ、お客様と会話する時間も生まれました。調理はこだわりの「椀物」以外は、接客のタイミングで提供されるので、調理と接客間も後出しコールでのいざこざもなくなりました。さらに、コミュニケーションを高めるためにも、お料理の説明会や事前試食会も行うようにし、お料理の口添えもしっかり行えることを目指しました。

お客様にとっては、ゆっくりと食事が楽しめ、一品一品をじっくり味わいながら、長岡の地酒(実際に売上がアップ)と共にお料理を楽しんでいただけるようになりました。接客は、事前セットがほとんどないことから、客室ご案内との業務バッティングもなくなり、一品出しにより下膳と提供が同時に行えるため、一気に片付けることもなくなりました。調理場へ行くこともないので、持ち場を離れることもありません。

そして、良い料理を提供している旅館へ

今回の料理改革は、「料理」商品を通して起きるさまざまな問題点を克服し、従業員もお客様も会社も、すべてがハッピーになることが最大のテーマです。以後、徐々にお客様の料理評価もいただけるようになり、クチコミ点数の大幅アップ、地元でも「和泉屋は料理が良い旅館」という声が聞かれるまでになりました。

和泉屋
和泉屋
所 在 地
新潟県長岡市よもぎひら温泉
客室数
43室
企画協力
株式会社 リョケン