株式会社リョケン

「2019年の営業状況と財務・損益状況調査」報告

平成31(2019)年1月から令和元年(2019)12月の間に決算期となった決算実績を対象に集計しました。調査旅館の平均客室数は61室、今回調査の規模別の件数割合は、大規模旅館は、19.6%、中規模旅館は51.0%、小規模旅館は29.4%となっています。

1.売上効率
(1) 宿泊客1人当り・客室1室当り・定員1人当りの売上高と売上構成比
(2) 定員稼働率と客室稼働率
(3) DOR、ADR、RevPAR
(4) 売上単価・入込の前回実績比較

2.損益構造(収益性)
(1) 損益構成比
(2) 主な経費の売上高比率、客1人当りの経費効率

3.財務構造
(1) 安全性
(2) 活動性
(3) 借入金適正度

1.売 上 効 率

(1)宿泊客1人当り・客室1室当りの売上効率及び各種KPI

①宿泊客1人当りの売上高・基本宿泊料 等

宿泊客1人当りの売上高の平均は19,881円、同基本宿泊料売上の平均は16,624円でした。日本旅館協会(以下、日旅協)全国平均と比較すると、宿泊客1人当りの売上高で708円下回り、宿泊客1人当りの基本宿泊料売上で954円上回っています。

宿泊客1人当りの附帯売上は3,257円で、うち飲食売上が1,311円、売店売上が741円という結果です。
また、日帰客1人当りの売上高の平均は5,104円でした。

 

客室1室当りの年間売上高

客室1室につき、年間いくらの売上をあげているかをみる客室1室当りの年間売上高は13,271千円と、日旅協全国平均を1,451千円上回っており、20,000千円を超える旅館は全体の12%でした。

また、客室1室当りの年間基本宿泊料売上は10,852千円、定員1人当りの年間売上高は2,746千円、定員1人当り年間基本宿泊料売上は2,066千円という結果でした。

 

定員稼働率、客室稼働率

旅館営業の効率を表す定員稼働率の平均は39.7%です。日旅協データの全国平均の38.1%を1.6ポイント上回っています。

内訳をみると、50%以上が全体の5.9%、45%~50%が17.6%、40%~45%が11.8%、30%~40%が58.8%、30%未満が5.9%でした。

規模別の平均は、大規模旅館36.9%、中規模旅館40.0%、小規模旅館49.8%という結果でした。

販売している客室のうち実際に利用された客室の割合をみる客室稼働率(OCC)の平均は、74.4%でした。

 

DOR、ADR、RevPAR

1室当り平均宿泊人員(DOR)は2.62人と、日旅協データの全国平均2.58人に対して若干上回る結果となりました。

ADRは、42,501円と、日旅協データの全国平均に対して、3,023円上回り、OCCをADRで掛けた数値のRevPARは、31,621円と、日旅協データの全国平均に対して、6,314円上回る結果となりました。

(2)売上単価・入込の前回実績との比較

今回ご回答いただいた旅館の、売上単価、入込人員の前回調査との比較は下記の通りとなっています。宿泊客1人当りの売上高は261円、宿泊客1人当りの基本宿泊料売上は365円上昇する一方で、宿泊客1人当りの附帯売上は104円減少しています。
一方、宿泊人員、日帰人員は減少しています。

2.損益構造(収益性)

(1)損益構成比

今回のアンケートでも収益性が高い旅館と低い旅館の格差が表れましたが、日旅協黒字旅館と比較して、売上原価や人件費は低く収まっていますが、諸経費は若干高くなっています。

 

① 売上原価率

平均売上原価率は22.7%で、日旅協全国平均23.3%、黒字旅館平均23.4%と比較すると、低く抑えられています。

 

② 人件費率

売上に対する人件費の割合は32.2%(うち外注費は2.7%)で、日旅協全国平均32.8%よりも低く収まっています。
従業員が効率的に働いているかをみる労働分配率(人件費÷売上総利益)は41.7%で、適正範囲といわれる40%を上回っています。

 

③  諸経費率(主な経費は5ページにて分析)

売上に対する諸経費の割合は35.3%で、日旅協全国平均34.9%を若干上回りました、営業費の割合は10.3%、業務費の割合は16.7%、管理費の割合は8.3%でした。

 

④ 償却前営業利益率

償却前営業利益(売上高-売上原価-人件費-諸経費)が売上高に対して、どの程度あるかをみます。この指標は、GOP(Gross Operating Profit=運営総利益)ともよばれ、経営判断において重要な数値です。

今回の調査では償却前営業利益率の平均が9.8%で、日旅協全体の平均と比較すると2.0ポイント上回っています。20%以上確保している旅館が全体の10%、15~19%台が16%、10~14%台が10%、5~9%台が44%、5%未満が20%となりました。

 

(2)主な経費の対売上高比率・客1人当りの経費効率

①主な経費の対売上高比率

主な経費の対売上高比率は、送客手数料率6.7%、広告宣伝費率1.9%、エネルギー費(水道光熱費+燃料費)率7.5%、修繕費率2.6%という結果です。

 

② 客1人当りの経費効率

客1人当りの主要経費の平均額は、送客手数料1,418円、広告宣伝費333円、エネルギー費(水道光熱費+燃料費)1,455円、修繕費416円でした。

3.財 務 構 造

今回も昨年同様に、安全性・活動性・借入金適正度について指標値を算出しました。ここではアンケート回答旅館の平均値を、理想とする財務構造と比較することにより全般的な傾向と課題を見ていきます。
(貸借対照表項目に記載のある施設のみ取りまとめていますので、1.売上効率、2.損益構造と集計対象旅館が異なります。)

(1)安 全 性

a.短期支払能力をみる流動比率の平均は122.3%で理想とする120%を上回っています。個別にみると、流動比率150%以上が全体の44.4%を占めています。一方で、100%以下も36.1%と施設により大きな格差がみられます。詳細をみると、流動負債である短期借入金・未払金の増加が流動比率を低下させる要因となります。

 

b.長期資本の運用状態をみる固定長期適合率の平均は96.0%と、流動比率同様に理想としている95%と同水準になっています。

 

c.自己資本(資本金・法定準備金・剰余金の計)が、総資本(=総資産)に対して占める割合を示す自己資本比率は16.8%となっています。

 

 

(2)活 動 性

a.投下した総資本に対してどれだけの売上高を上げられたかをみる、総資本対売上高回転率の平均は0.72回転でした。

 

b.総資本に対してどれだけの経常利益を確保できたかを示す、総資本対経常利益率(企業の業績評価の重要ポイントともいわれます。)は今回の調査では1.55%という結果でした。

(3)借入金適正度

a.借入金(長期借入金+短期借入金)に対して、売上高がどの程度あるかをみる借入金対売上高回転率は、平均で1.29回転でした。

 

b.借入金対償却前営業利益率は、利息支払・元金返済の原資となる償却前営業利益が、借入金に対してどの程度あるかを示す数値です。
今回調査では、11.03%でした。