株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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磨け! 独自価値(2)

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

「よそにあるかないか」「お客さまに価値として認められるか認められないか」で、商品の価値は四つに仕分けることができる。その一つ、「お客さまに価値として認められるが、よそにもあるもの=同質価値」について前回述べた。今回は残る三つについて見ていきたい。

商品価値の仕分け(続き)

(ⅱ)よそにはないが、お客さまに価値として認められないもの=「独善的価値」

 

お客さまに価値として認められないものは、たとえ唯一無二であっても単なる「独り善がり」に過ぎない。それ自体は価格競争にはなりにくいが、そもそも価値として認めてもらえないから、「選ばれる理由」にもならない。

 

(ⅲ)お客さまに価値として認められず、よそにもあるもの=「無価値」

 

どちらの条件にも当てはまらないものは、無価値であるばかりか、資金的にも労力的にも浪費であり、「マイナス価値」と言ってもよい。資源の無駄遣いなので、今すぐにでもやめた方がよい。例えば経営者の趣味で、むやみに高価な器を使っている場合などである。あるいはロビー周りに陳列された古色蒼然たる美術品など、コストはかからないかもしれないが印象にマイナスをもたらすものもある。

ただし、もっぱらそういうものの価値が分かるお客さまを相手に、雰囲気やソフト面などもそれにふさわしい品質バランスを整えてやっているなら話は別だ。

 

(ⅳ)よそになく、お客さまに価値として認められるもの=「独自価値」
これの意味については前回すでにふれたので省く。
ある高級旅館では、花柄入りのトイレットペーパーが使われていた。エンボス加工、二重巻きで紙質もふっくらと柔らかい。たかがトイレットペーパーだが、他ではこういうものをあまり見ない。これは独自価値と言ってよいと思う。当然、ありきたりのペーパーよりは高いだろうが、明らかにコスト以上の十分な価値を生んでいる。大事なことは、それがいかにもこの旅館のグレード感に似つかわしく、「さすがだなぁ!」と感じさせることである。

 

さて、以上のように分類してはみたが、これはイメージをご理解いただくためシンボリックに示したのであって、実際にはこれほど単純に仕分けできるわけではない。多くは「どこ」とも分類できない、中間に位置するのではないかと思う。
さらに「同質価値」としたものについても補足しておきたい。現実問題として、旅館で提供されている商品要素(環境、施設、料理、サービス)のほとんどが、ほぼ同質に近いもの(コモディティ)であるはずだ。なぜなら、それらなしには宿泊や飲食の機能を果たすことはできない。
にしても…である。同質価値と思われるものに投入しているお金や労力を、なるべく独自価値の方向に置き換えていくことを考えたい。

 

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2018年9月に観光経済新聞に掲載されたものです。

 

 

 

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